JRA「実は……間違えて」馬名申請!? “珍名馬”アイキャン同意の誕生に「グランアレグリア2世」より注目集まった?
10日(日)、東京競馬場で行われた4R・2歳新馬(芝1600m)は、C.ルメール騎手の1番人気ラスールが勝利。G2を3勝したシャケトラの半妹にあたるキタサンブラック産駒の走りにルメール騎手からは「新しいグランアレグリア」という最高の誉め言葉も出た。
一方、このレースで2着に入ったのは関西から遠征していたアイキャンドウイッ(牡2歳、栗東・池江泰寿厩舎)。こちらも父がディープインパクト、近親には16年オークス馬のシンハライトがいるように、勝ち馬に負けず劣らずの良血馬だ。
レースでは最内枠から好スタートを切ったアイキャンドウイッがハナを奪うと、先頭のまま東京の長い直線へ。残り1ハロンまでしぶとく粘っていたが、最後は力尽きて、3馬身半差で突き抜けた勝ち馬の軍門に下った。
鞍上を務めた横山武史騎手は「スタートが速かったので、出たなりに行きました」と逃げの手を打った理由を説明。「ただ直線は内にモタれて追えませんでした。大きな課題だと思います」と今後に向けての改善点も挙げていた。
勝ち馬には完敗したアイキャンドウイッだが、3着のロジレットには2馬身差をつけており、勝ち上がりは時間の問題に思える好走。母系には2歳戦から活躍した馬も多く、今後が楽しみな存在だ。
このレースを見たファンの中には、アイキャンドウイッの馬名が気になった人も多かったのではないだろうか。その由来は、「私ならできる」なので、英語で表記すればすなわち「I can do it」だと思われる。
しかし、馬名は9文字までという縛りがあるため、「イット」の「ト」が足りない。ただ、これはネイティブの発音に従えば、むしろ正解に近いといえるだろう。むしろ気になるのは「ドウイッ」の「ウ」の方だ。「do」なので、「ドゥイッ」がベターに思えるが……。
「以前から本馬の馬名についてSNSなどでは話題になっていたようですね。確かに『ドウイッ』は『ドゥイッ』じゃないのかと指摘する声は以前からありました。さらに注目を集めたのがレース実況を担当したラジオNIKKEIの山本直也アナの発音です。
アイキャンドウイッは最後まで上位争いを演じたため、当然、レース中にその馬名は連呼されることに……。山本直也アナは馬名表記に忠実な『アイキャンドウイッ』と発音していましたが、これにはTwitter上でも『アイキャン同意なのか!』とツッコミの声が多数飛び交っていました(笑)。
ラジオ日本の中継を聞いていたのですが、実況を担当した堀江政史アナは馬名の由来に従って『アイキャンドゥイッ』と発音していたので、今後どっちの発音が採用されるのか、アナウンサーによってバラバラになるのか、注目したいですね」(競馬誌ライター)
実は今回の「ドウイッ」問題について、オーナーの吉澤ステーブルはTwitterで次のように明かしている。
「発音のそれじゃない感を指摘されていますが、実は、オーナーが『ウ』を『ゥ』にするのを間違えて馬名申請したようです(口を手で覆った顔文字)
オーナーは、訂正できるものならしたいとのこと。以上、現場からお伝えします」
吉澤ステーブルは、「#アイキャン同意 #ただの間違え #訂正希望」という3つのハッシュタグとともにそうツイート。さらに、「I can do it か You can do it にするか最後まで悩んで、そして最後にウをゥにするのを間違えた」とその経緯をアピールしていた。
馬名の申請間違いといって思い出されるのが、91年の有馬記念(G1)で単勝万馬券の大穴をあけたダイユウサク。本来は「ダイコウサク」と名付けられるはずだったが、「コ」と「ユ」が取り違えられてしまったのは有名な逸話だ。
海外でも後に米三冠馬に輝いたアメリカンファラオの例がある。オーナーがスペルを間違えて登録。馬名を日本語で表記する際は、「ファラオ」なのか「フェイロー」なのか、それとも「フェイロア」なのか混乱をきたしたこともあった。
ダイユウサクとアメリカンファラオはともに、デビュー戦には敗れたが、その後G1馬に輝いている。アイキャンドウイッが初戦2着に敗れたことは吉兆なのかもしれない。
Can you 同意?(同意してくれますよね?)
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。