JRA秋華賞(G1)で繰り返された25年前の悪夢、吉田隼人「やなとこ出してきたな」ソダシ惨敗の予兆はあった!?

ソダシ 撮影:Ruriko.I

 白毛のアイドル・ソダシフィーバーで盛り上がった今年の秋華賞だったが、牝馬ラスト一冠を制したのは三冠牝馬アパパネの仔アカイトリノムスメ。紅白対決ともいわれた決戦の舞台で、両親合わせて12冠の超良血馬が待望の初G1タイトルを手に入れた。

 これに対し、まったくいいところなく10着に敗れたのが、主役であるはずのソダシ(牝3、栗東・須貝尚介厩舎)だ。3着以内に4番人気アカイトリノムスメ→2番人気ファインルージュ→3番人気アンドヴァラナウトが入ったように、上位人気馬が実力通りの走りをした順当決着の中、ソダシのみが大きく崩れる惨敗を喫してしまった。

 単勝オッズ1.9倍の圧倒的1番人気に支持されながら、これは不完全燃焼ともいえる結果というよりない。

「イメージ通りの競馬は出来たのですが苦しくて走れませんでした。楽なペースだったのですが、今日は、いつもの感じではありませんでした」

 デビューからコンビを組み続ける吉田隼人騎手でさえ、レース後のコメントでパートナーの異変を感じていた敗戦。本来の実力を出し切れていれば、ここまでの大敗とならなかったのではないか。

吉田隼人騎手 撮影:Ruriko.I

「ファンの期待に応えられず申し訳ない気持ちです。ずっと競馬を使ってきて、今日はポケットから出たくなかったり、ゲートを苦しがるそぶりがあったり、競馬を嫌がるそぶりがあったかもしれません」

 吉田隼騎手がそう振り返ったように、この日のソダシはレース前から冷静さを欠いていたようにも見える。

「やなとこ出してきたな……動け、固まっちゃったよ、ほらぁ行くぞ。固まっちゃった……」(一部抜粋)

 カンテレ競馬【公式】のYouTubeライブ配信では、待機所で吉田隼騎手が促しても微動だにしないソダシの姿が映されていた。そしてレースに気持ちが向かっていなかったこの精神状態も、おそらくゲートにぶつけて歯が折れたといわれる流血の一因となった可能性もある。

「直前に行われた西宮S(3勝クラス、芝1800m)の上がり3ハロンが34秒2に対し、秋華賞(芝2000m)のそれが36秒5だったように、タフな流れだったことは確かです。ただ、前後半1000mのラップは61秒2-60秒0とペース的にはスロー寄りの展開。吉田隼騎手のコメントからも、舞台が異なるとはいえ、2000mを克服した札幌記念(G2)より楽な流れでした。

ゴール前で抜け出して止まったところを、後続に交わされたならまだ分かりますが、逃げたエイシンヒテンすら交わせないのでは……。距離が長かったというより、本来の走りではなかったと考える方が自然な気もしますね。一部では『マイルに戻すべき』や『ダートに転戦してみては?』といった声も出ていますが、まだその段階ではないと思います」(競馬記者)

 その一方で、ソダシの敗戦で思い出されたのが、遡ること25年前。同じく断然人気のエアグルーヴが10着に敗れた1996年の秋華賞である。このときは、オークス(G1)から直行だった上に、パドックでのフラッシュ撮影が続いため、返し馬でもパニック状態が収まらなかったとされる。レース後には骨折も判明したが、全く関係がなかったとも言い切れない。

 そして、今年の秋華賞でもソダシの姿を一目見ようとするファンも詰め掛け、当日の阪神競馬場はプラチナチケット化していた。コロナ禍の状況で入場制限があったものの、この日のパドックにいつも以上の撮影があったことは、想像に難くない。

「絶対に負けたくない」と馬以上にイレ込んだ陣営の仕上げが、匙加減に微妙な誤差を生んだり、過熱し過ぎたソダシフィーバーが、ソダシ自身の精神面に少なからずよくない影響を与えていたとすれば、残念としか言いようがない。

 ソダシの関係者の情報によると、幸い大事には至らなかったとのことで、脚元にも問題はなかったようだ。ターフで再び元気な姿を見せてくれることに期待したい。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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