JRA吉田隼人「主役の秋」から一転、まさかの連敗。大本命ソダシ惨敗に続き、ステラヴェローチェも空転……狂った歯車止められず
「隼人の秋」にはならなかった。
24日、阪神競馬場で開催されたクラシック最終章・菊花賞(G1)は、4番人気のタイトルホルダーが5馬身差の圧勝で戴冠。皐月賞馬、ダービー馬不在の一戦で皐月賞2着馬が貫録を見せつけた。
「馬は余裕だったかもしれませんが、ジョッキーはまったく余裕はなかったです(笑)」
レース後、そう白い歯を見せたのは、22歳にして“二冠”を成し遂げた横山武史騎手。皐月賞を制したお手馬エフフォーリアは来週の天皇賞・秋(G1)に向かったが、タイトルホルダーとのコンビで2つ目の牡馬クラシックを手にするなど、今最も乗れている若手騎手だ。
その一方、ハナ差で馬券圏外となる4着に敗れてしまったのが、皐月賞と日本ダービー(共にG1)で3着と好走したステラヴェローチェ(牡3歳、栗東・須貝尚介厩舎)と吉田隼人騎手だ。
秋の三冠ロードが開幕する直前、吉田隼騎手は間違いなく話題の中心にいた。
牝馬三冠では桜花賞馬で白毛のアイドル・ソダシが秋華賞(G1)で抜けた1番人気が確実視されており、二冠に最も近い存在だった。一方の牡馬三冠もステラヴェローチェが神戸新聞杯(G2)でダービー馬シャフリヤールに完勝。春のクラシックホース不在の菊花賞で最有力候補に挙がっていた。
デビューイヤーで3勝に終わった苦労人がこの2頭と共に、ついに競馬界の主役を務める時が来たと、多くのファンが注目していた。
しかし、秋華賞でゲート前に移動することを拒むなど、白毛のアイドルとしての重圧に苦しんでいたソダシはまさかの失速……。二冠達成間近と思われていたはずが単勝1.9倍を裏切る10着に敗れ、この上なく順調だった吉田隼騎手の歯車に狂いが生じ始めた。
そんな中で迎えたこの日の菊花賞。1番人気濃厚と思われたステラヴェローチェは、レース直前にレッドジェネシスに交わされて2番人気に。マイナス12kgという馬体重がファンの信頼に陰りを落としたか、それとも吉田隼騎手の運気の陰りを敏感に感じ取ったか。いずれにせよ、まさかの2番人気といえた。
レースでは、そんな悪い予感が的中した。後方からレースを進めたステラヴェローチェは勝負所でまくりを仕掛けるも、外々を回らされる展開。結果論だが、タイトルホルダーを捕らえるには、ロスのない内を回る他なかったように映った。だが、ライバルたちがそれを許さなかった印象だ。
「あの(神戸新聞杯の不良)馬場を走った疲れもあって、ここまで来たんだから力はある。自分から動く形で勝ちにいって、格好はつけられたのでは」
レース後、そう相棒を庇った吉田隼騎手。「隼人の秋」になると思われた三冠ロード最終章だったが、まさかの無冠。それも、どちらも馬券にすら絡めないという厳しい結果に終わってしまった。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。