JRA 順調ならJBCクラシック「優勝候補」!? テーオーケインズ、ダノンファラオ圧倒した「G1級」快速馬の衝撃的過ぎた末路
昨年の伏竜S(OP)を勝利したヘルシャフトが、今月15日付けでJRAの登録を抹消した。同期には、今年のフェブラリーS(G1)を制したカフェファラオや、帝王賞(G1)を制したテーオーケインズなど錚々たる面子が名を連ねている。
ただヘルシャフトはそんなハイレベルな現4歳世代の中でも「トップクラスに強かったのでは」「G1勝てる器」と、一部の競馬ファンから声が上がっていたスケールの持ち主。「G1級」とも噂されたヘルシャフトとはどんな馬だったのだろうか。
同馬は2013年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬を受賞したウィルテイクチャージを父にもつ米国産馬である。19年9月に阪神ダート1800mの新馬戦でデビューしたが、今年のレディスプレリュード(G2)を制したレーヌブランシュの4着に敗れている。
当時の鞍上だった福永祐一騎手から集中力の課題を指摘されたヘルシャフトは、距離を2ハロン短縮し2戦目に臨む。距離を短くしたことでレースに集中できたのか、2戦目でガラリと一変。後続に4馬身差をつけて初勝利を挙げた。
その後は3戦1勝。連勝こそないが、後の活躍馬を多数輩出している名馬の登竜門的なレースでもあるヒヤシンスS(L)を含めて、全て掲示板圏内と大敗なしと安定した成績を残す。
そして迎えた6戦目。ヘルシャフトの能力が遂に花開いた。
「まずまずのスタートを切ると、押して押してハナを取り切りました。そこからはヘルシャフトの一人旅です。2番手でマークした後のG1馬ダノンファラオが直線で力尽きており、決してマグレとは思えない10番人気の低評価を覆す快勝でした。
精神面に問題があった馬ですから、気分よくいけたのが勝利の要因だと思いますが、着差・内容ともに強かったです」(競馬誌ライター)
一見すると、ヘルシャフトがただ逃げ切っただけに思える。しかし伏竜Sは先述のヒヤシンスS同様に数少ない3歳馬のダートOP戦。かなりの好メンバーが揃っており、ヘルシャフトはそれら実力馬を一蹴したわけだ。
「2着馬から6着馬までが現在JRAのオープンクラスに在籍しています。2着のテーオーケインズ、3着のミヤジコクオウ、5着のレーヌブランシュ、6着のダノンファラオは重賞で活躍している実績馬ですよね。
また10着のイモータルスモーク、12着のライトウォーリアも現在はオープン馬。ライトウォーリアに至ってはヘルシャフトが抹消した翌日に太秦S(OP)を勝っています」(同)
後の活躍馬が多数いたハイレベルなレースを制したことでその実力を証明したヘルシャフト。ただ残念ながらこれがJRA最後のレースとなってしまった。
「伏竜S後は馬体調整の名目で放牧されましたが、その後は順調さを欠いて今回抹消される運びとなりました。ネットの掲示板やSNSでは、復帰を期待していたファンが悲しんでいる発言も多数あります」(同)
気になるヘルシャフトのその後だが、幸い競走馬として引退するのはまだ先になる見込み。何と今後は地方競馬に拠点を移し、現役を続行するようだ。
「ヘルシャフトは兵庫県競馬の西脇トレセンで、10月26日に能力検査を行っています。今後は園田競馬場などで後の重賞馬を下した走りを発揮してくれることでしょう」(同)
伏竜Sで一蹴したテーオーケインズとダノンファラオは来月行われるJBCクラシック(G1)の優勝候補と目されている馬だ。順調ならヘルシャフトも優勝候補の1頭に挙げられていたとしても不思議ではない。
G1級のポテンシャルの高さを感じさせた馬としては、1年以上も復帰しないまま、地方競馬に移籍したことは衝撃的ともいえる末路にも感じられるが、今後順調にダートグレード競走などに進むようなら、同期G1馬たちと再戦することもあるかもしれない。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……