JRA 横山武史「油断騎乗」で騎乗停止…有馬記念(G1)もあやわの大ピンチ!? 単勝1.7倍「エフフォーリア弟」で出陣もまさかの結末
有馬記念(G1)が行われる前日の25日、中山競馬場に注目のスター候補が登場した。
5Rの新馬戦にはフルゲート16頭と頭数が揃ったが、大勢のファンのお目当ては3枠6番のヴァンガーズハート(牡2歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)だったに違いない。
父ハービンジャー、母ケイティーズハートの血統。母名を見てピンとお気付きの方も多いだろう。翌日のグランプリに歴代最多得票で出走するG1・2勝馬エフフォーリア(牡3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)の半弟なのだ。
父はエピファネイアからハービンジャーに変わったが、陣営の期待は当然高い。偉大な兄に胸を借りた最終追い切りでは併せて遅れてしまったが、水準以上の時計をマーク。鹿戸師は「真面目で前向きなタイプ。稽古の動きからも楽しみ」と、太鼓判を押していた。
気になる鞍上は、もちろん横山武史騎手だ。デビュー4連勝で皐月賞(G1)を制した兄エフフォーリアとイメージを被らせるファンの影響か、ヴァンガーズハートは単勝オッズ1.7倍と圧倒的な支持を集めた。
芝1800mで行われたレース。「ゲートは速い方」と話す鹿戸師の言葉通り、まずまずのスタートを決めると、道中は好位5、6番手を追走。楽な手応えで徐々に進出し、3番手まで浮上し直線を迎える。
持ったまま、粘り込みを図るスズノテレサをアッサリ交わして、単独の先頭へ。横山武騎手はその後もステッキを入れることなく、促す程度。誰もがエフフォーリア弟のデビュー勝ちを期待したはずだった。
その矢先、内から鋭い末脚で急追するルージュエヴァイユが現れる。ゴールまで残り僅かだが、脚色はヴァンガーズハートを飲み込むほど。2頭は並んだ状態でゴールを迎えた。
ヴァンガーズハートか、ルージュエヴァイユか。ファンや関係者が固唾を飲んで見守るなか、長い写真判定の結果、軍配は強襲したルージュエヴァイユに上がった。
楽勝ムードから一転、2着へ敗れた横山武騎手は「返し馬から物見をしていて、レースでも早めに抜け出したくなかったのですが、最後にフワッとしてしまったところがありました」と、悔しさを滲ませていた。
今回の結果に悔しい気持ちが残るのは、ヴァンガーズハートを応援していたファンも同様だろう。
レース後、SNSやネット上の掲示板などでは「勝ったと思ったのに……」「うわ……差されてた」など、ヴァンガーズハートのハナ差惜敗を悔やむ声で溢れていた。
一方、中には「これは油断騎乗では」「しっかり追っていれば勝てた」「フワッとしていたのは騎手では」など厳しい意見も。特に「油断騎乗」のワードは一時Twitterのトレンド入りもしていた。
「あちゃあ……。人馬共に痛い敗戦となってしまいました。4コーナーを回った際の手応えは抜群でした。あとはお兄さん同様に後続を突き放していくと思ったのですが……。
レース映像を見返すと、横山武騎手は左後方の確認を頻繫に行っています。これはヴァンガーズハートが、直線で左へヨレていることが原因だと考えられます。矯正や後方確認に手間取っている間に、進路を切り替えたルージュエヴァイユに差されてしまったといったところでしょうか。
すでにJRAの公式ホームページでは『6番の騎手が追う動作を緩めた』として、裁決パトロールがアップされているため、横山武騎手の油断騎乗は決定的という他ありません。今後、何らかの処分が下ると思いますが、過去の同様のケースから明日の有馬記念に乗れないということはないかと思いますが……」(競馬記者)
その後、JRAは公式HPで「6番ヴァンガーズハートの騎手横山武史は、決勝線手前で数完歩追う動作を緩め2着(1着とはハナ差)となりました」と、やはり横山武騎手の油断騎乗を指摘。
「この騎乗ぶりは、明確に着順に影響があったとは認められないものの、騎手としての注意義務を怠ったものであることから、同騎手を2022年1月15日(土)から2022年1月16日(日)まで2日間の騎乗停止としました」と騎乗停止処分が下された。
ただ、場合によっては有馬記念の騎乗さえ危うかった横山武騎手にとっては、首の皮一枚つながったといったところだろうか。
横山武騎手としては、弟で勝利して明日の兄へ繋げたいところだっただろう。ゲン担ぎを狙うどころか、場合によっては本番の騎乗さえ危うくなってしまう結果……。グランプリでは決してゴールする瞬間まで気を緩めない巧みな騎乗で、現役人気ナンバーワンホースをG1・3勝目に導くことに期待したい。
(文=坂井豊吉)
<著者プロフィール>
全ての公営ギャンブルを嗜むも競馬が1番好きな編集部所属ライター。競馬好きが転じて学生時代は郊外の乗馬クラブでアルバイト経験も。しかし、乗馬技術は一向に上がらず、お客さんの方が乗れてることもしばしば……