JRA“女の戦い”は痛み分け!最後まで争った熾烈な新人最多勝争い!「実力主義」時代突入を予感させたルーキーズの1年

永野猛蔵騎手 撮影:Ruriko.I

 28日の中山・阪神開催で幕を閉じた、今年の中央競馬。様々な話題があった2021年の競馬界の中でも、忘れてはならないのが新人ジョッキーたちの奮闘ぶりだ。

 新人騎手8人がデビューした3月6日は、阪神1Rで小沢大仁騎手が初騎乗初勝利を記録しただけでなく、中山3Rでも永野猛蔵騎手が同じく初騎乗初勝利。最初の1ヶ月で8人中6人が勝利を挙げるなど、今年の新人騎手は馬券的にも無視できない存在となった。

 デビュー1年目を終えた結果、8人中4人が2桁勝利をマーク。毎年のデビュー人数が違うので単純に比較はできないものの、近年では異例といえる活躍をみせた今年は新人の「当たり年」だったといえるのではないだろうか。

古川奈穂騎手

 8人の中で、最初に注目を集めたのは古川奈穂騎手だ。4月3日の阪神3Rで1着となり、初勝利を挙げた週から4週連続で勝利を記録。これは96年の福永祐一騎手以来と話題を集めた。

 しかし「好事魔多し」とはこのことか。4月25日の騎乗を最後に左肩の治療のため長期休養に入り、復帰したのは10月9日。最終的には、もうひとりの新人女性ジョッキーとして話題を集めた永島まなみ騎手と同じ7勝で1年目を終えた。

 この2人の強みは、なんといっても「減量制度」にある。19年導入の新制度で、女性騎手の斤量は永久的に2キロ軽減。さらに50勝以下の見習騎手のルールと合わせると、最大4キロ減の恩恵を受けるこの2人は、通算51勝目を挙げるまで平馬戦では4キロ減での騎乗が可能。来年以降も女性騎手のメリットともいえる「減量制度」を活かした騎乗ぶりを見せることで、存在価値も出てくるだろう。

 一方で「当たり年」と言われた今年のルーキー最多勝争いを制したのは、31勝をマークした小沢騎手。3月28日の鈴鹿Sを勝利して、同期で特別戦勝ち一番乗り。その後も勝ち星を積み重ね、5月29日の中京12Rではこちらも同期最初の10勝目を記録した。

 31勝を記録したことでG1騎乗が可能となった小沢騎手と、最後まで激しい最多勝争いを演じたのが、「タケゾー」こと永野騎手。2人の争いは最終週までもつれ、結果的に29勝に終わったものの、関東所属の同騎手の健闘ぶりはもっと評価されてもよいだろう。

 そもそも新人騎手の起用スタンスには、東西で異なった傾向があるといわれる。リスク承知で積極的に若手を起用する関西厩舎に対して、関東厩舎の場合は「実績重視」で若手を起用。こうした傾向は、過去の例をみても明白だ。そんな背景がありながら特別戦3勝をマークした永野騎手は、来年以降も注目のジョッキーといえる。

 小沢、永野両騎手の共通点といえば、競馬界とは縁のない一般家庭で育ったという点。2人の1年目の活躍は、たとえ「血縁関係」がなくとも結果を残せば、騎乗依頼を得ることができることを証明したのではないだろうか。

 来年から「新人」の看板が外れ、若手騎手というカテゴリの中に放り込まれる8人のジョッキーたち。お互いに切磋琢磨を繰り返して、「2年目のジンクス」を吹き飛ばすような活躍を期待したい。

(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。

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