JRA武豊「キタサンブラックで行きたかった」凱旋門賞(G1)制覇への思い。ディープインパクトより「強い馬じゃないと勝てないということはない」悲願達成のキーポイントとは

武豊騎手 撮影:Ruriko.I

 8日、『うまンchu~競馬でアナタを口説きます!~』(関西テレビ)にて、元JRA騎手の安藤勝己氏と武豊騎手が新春恒例のレジェンドジョッキー対談を行った。

 詳細はぜひ番組をご覧いただきたいが、今年で5度目となる対談は、ビールを片手に武豊騎手の乾杯の音頭でスタート。様々な話題で盛り上がる中、今回もフランス競馬が誇る世界最高峰の舞台・凱旋門賞(G1)について話が及んだ。

 1969年のスピードシンボリの初挑戦から53年。今や、日本競馬の悲願となっているのが凱旋門賞制覇だ。

 昨年は女王クロノジェネシスに加え、前哨戦のフォワ賞(G2)を勝利したディープボンド、そしてこれが9度目の挑戦となった武豊騎手もアイルランド調教馬ブルームで参戦したものの、いずれも惨敗……。またも世界の壁の高さを思い知らされる結果に終わった。

「やっぱり、途中で(気持ちが)折れちゃうんですよね。道悪が苦手で。走り方よりも、イヤになっちゃう馬が多い」

 番組内でそう理由を挙げたのが、武豊騎手だ。この意見には隣にいた安藤氏も「(馬が)走りにくい!やめたー!とか思っちゃう」と同意。日本馬がなかなか経験できない欧州独特の重い馬場コンディションが、本来の力を発揮できない最大の原因になっていると分析している。

 かつてはディープインパクトやオルフェーヴルといった、日本競馬史上最高レベルの馬が挑んでも、頂点には手が届かなかった凱旋門賞。これだけを見ても壁は極めて高いように見えるが、武豊騎手は「『それよりも強い馬じゃないと勝てない』ということはないと思う」と持論を展開。「意外な馬が勝ったりするかも」と続けた。

「武豊騎手が強調していたのは、重い欧州の馬場に対する適性ですね。代表的な馬は、2010年の凱旋門賞で2着したナカヤマフェスタでしょうか。あの馬は同年の宝塚記念(G1)を8番人気で勝ったものの、日本最強という馬ではありませんでした。

光っているのは、2009年の日本ダービー(G1)の激走です。この年は歴史的な不良馬場でした。田んぼのような状況で、出走馬のほとんどがまともに走れずに極端な前残りとなる中、唯一後方から4着まで追い上げたのがナカヤマフェスタ。現役の中でも屈指の重馬場巧者でした」(競馬記者)

 実際に、番組内で過去に凱旋門賞へ出走しなかった馬にもチャンスがあったという話題になると、武豊騎手が真っ先に挙げたのがキタサンブラックだった。

「土砂降りの天皇賞でも勝ったように、ああいう馬場も平気だった」との言葉通り、キタサンブラックは歴史的な不良馬場となった2017年の天皇賞・秋(G1)を勝利。2年連続の年度代表馬に輝いた実力も然ることながら、このレースが最も印象に残っているファンも少なくないだろう。

「行きたかったなあっていうのはありましたね」

 そうしみじみ振り返った武豊騎手は、北島三郎オーナーと有馬記念(G1)で歌った思い出を取り上げ「ロンシャンで“まつり”を歌いたかった」と笑いを誘った。

 昨秋の東京スポーツ杯2歳S(G2)でイクイノックスが重賞初制覇。9日のシンザン記念(G3)にも最有力のラスールを送り込むなど、順調な種牡馬スタートを切っているキタサンブラック。主戦ジョッキーの悲願は、産駒が叶えてくれるかもしれない。

(文=大村克之)

<著者プロフィール>
 稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。

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