JRA戸崎圭太「申し訳ありません」大器ドゥラドーレス「ドン詰まり」で日本ダービー(G1)プラン崩壊……残された「3つの選択肢」は、すべていばらの道
26日、阪神競馬場で行われた3歳の中距離重賞・毎日杯(G3)は、藤岡佑介騎手の4番人気ピースオブエイトが見事な逃げ切り勝ち。東上最終便といわれる注目のレースを制し、クラシック制覇の夢に一歩近づいた。
「今日は馬場も考えて少し前めでというオーダーでしたから、逆らわずに乗りました。出世レースですし、非常に楽しみな馬だと思います」
会心の勝利を振り返った藤岡佑騎手のエスコートもまた、この勝利に大きく貢献した。前走のアルメリア賞(1勝クラス)を制したピースオブエイトは、これでデビューから無傷の3連勝。3戦すべて異なる騎手が手綱を取っても、負けなかった操縦性の良さは、次走でも強力な武器となるだろう。
一方、今年の毎日杯で最も注目を集めたのは、同じ無敗馬でもドゥラドーレス(牡3、美浦・宮田敬介厩舎)の方だった。
前走のセントポーリア賞(1勝クラス)では、昨秋に東京芝2000mで2歳日本レコードとなる1分58秒5をマークしたウィズグレイス相手に3馬身の差をつける圧勝。C.ルメール騎手が手綱を取る今年のオークス馬候補を撃破した走りに評価は急上昇した。
これには管理する宮田敬調教師も日本ダービー(G1)を意識。大一番からのローテーションを逆算し、2ヶ月前の毎日杯出走を決断した経緯がある。
優勝が必須、最低でも2着での賞金加算が至上命題で挑む大本命馬に対し、ファンも単勝2.1倍の1番人気に支持したが、直線での猛追及ばず3着に不覚を取ってしまった。
「内枠だったので下げてもいいかなと思いましたが、馬群を捌けずに追い出しが遅れました。力のあるところは証明できましたが、人気に応えられず、申し訳ありませんでした」
レースを振り返った戸崎騎手が謝罪した通り「馬場も考えて少し前めでというオーダー」を受けていたピースオブエイトの藤岡佑騎手とは、あまりに対照的な慎重策。あくまで結果論だが「下げてもいいかな」という臨機応変な思考が裏目に出た格好だ。
「出遅れ気味のスタートはこれまでと同じ。ドゥラドーレスにとって不運だったのはやはり最内枠でしょうね。インを狙わないのなら、戸崎騎手も早めに進路を確保したかったところ。道中で悩んでいる内に周りを囲まれてしまいました。
直線でもリアド、セイウンハーデス、外にはテンダンスと前が壁の状態。ようやく外に出してから猛然と追い込みましたが、エンジンがようやく全開になりかけたところでゴール。スムーズに捌けていれば、際どかったと思えるだけの脚色でした」(競馬記者)
ネットの掲示板やSNSなどでは、この敗戦を目撃したファンの一部から「最内で出遅れたなら仕方ない」と納得する意見もあれば「頼むよ戸崎」「乗り替わり希望」「これならポツンからの大外一気の方がマシ」という厳しい声も出ていた。
結果的に「負けて、なお強し」の印象を残したドゥラドーレスだが、勝利が至上命題だった今回、そこに意味はない。賞金を加算できなかったことは、陣営にとっても大きな誤算である。ダービーに出走するためには、どこかでもう1戦挟んで権利を取らなければならなくなった。
そこで問題なのは、次に出走するレースの選択だ。
日本ダービー出走を確実なものにするための候補として、主に4月30日の青葉賞(G2・東京芝2400m)や、5月7日のプリンシパルS(L・東京芝2000m)で優先出走権を獲得する、もしくは京都新聞杯(G2・阪神芝2200m)を勝利して賞金を上積みするかの3パターンが現実的だ。
しかし、関東馬のドゥラドーレスにとって短期間で二度目の関西輸送は、出来れば避けたいはず。となると東京で開催の2レースが望ましいが、広く知れ渡っているように、両レースを経由してダービーへ出走した馬の優勝事例は過去にない。
これに対し、京都新聞杯を連対して経由した場合は2000年アグネスフライト(優勝)、2013年キズナ(優勝)、2019年ロジャーバローズ(2着)の3例がある。あくまで過去のデータとはいえ、青葉賞やプリンシパルS組が本番でどれだけ人気しても勝てなかった歴史は見過ごせないはず。
勝負駆けともいえる今回の一戦を落としたことにより、ダービーを狙うドゥラドーレス陣営も悩ましい決断を迫られることになるだろう。
どちらかというと器用なタイプでもなく、広いコースで伸び伸びと走らせた方が能力を発揮しやすい馬。次走で陣営がどのような決断を下すのかに注目である。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。