JRA福永祐一「武豊超え」の最終関門はキングヘイロー!? 日本ダービー(G1)前人未到の三連覇へ「恩馬」から与えられた試練

ジオグリフ

 29日、東京競馬場では競馬の祭典・日本ダービー(G1)が行われる。前人未到の三連覇に挑むのが、皐月賞馬のジオグリフ(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)とコンビを組む福永祐一騎手だ。

 同騎手が日本ダービーに初騎乗したのは、デビュー3年目の1998年。パートナーのキングヘイローは武豊騎手が乗るスペシャルウィークに次ぐ2番人気の支持を受けていた。

 だが、レースではまさかの逃げの手に出ると、直線で早々に失速して14着に惨敗。顔面蒼白になって引き上げてきた福永騎手は、「頭が真っ白になって逃げてしまった」とのコメントを残すなど、苦い経験をしている。

 しかし、それからちょうど20年後に行われた2018年のダービーを、ワグネリアンとのコンビで見事に初優勝。ここ2年間もコントレイルとシャフリヤールで連覇していることから、近年では「令和のダービー男」などとも呼ばれている。

 今年の相棒であるジオグリフとは、前走の皐月賞で初のタッグを結成。レースでは5、6番手を追走すると、直線で僚馬のイクイノックスを交わして見事に1着。テン乗りだったにもかかわらず、完璧なエスコートをして見せた。

 今回は、父が現役時代にダート短距離を主戦場としていた新種牡馬のドレフォンということで、芝2400mへの距離延長がカギとなってくるか。

 ただ、兄のアルビージャは先日14日に東京の同舞台で行われた緑風S(3勝クラス)を快勝。近親にも日本ダービーで2着に入ったインティライミなどがいることから、血統的にはこなせる下地も十分にありそう。

 となると、あとは福永騎手の手腕にかかってくるといえるかもしれない。武豊騎手でさえも未だ成し遂げていないダービー三連覇を達成できるのか、大いに注目が集まりそうである。

イクイノックス

福永祐一「武豊超え」の最終関門はキングヘイロー

 そんな人馬の最大のライバルになりそうなのが、『netkeiba.com』の想定オッズでも1番人気に推されている、僚馬のイクイノックスか。

 皐月賞では1馬身差をつけてジオグリフが勝ったものの、事前予想が示す通り、東京の芝2400mではイクイノックスが逆転するという見方も強いようだ。先週のオークス(G1)で今年の初重賞勝利を挙げたC.ルメール騎手も脅威かもしれない。

 また、血統的に注目したいのが、イクイノックスの母父が福永騎手のダービー初騎乗馬のキングヘイローである点だ。

 福永騎手は以前、『UMAJIN.net』で行われた「ジョッキーに100の質問」において、キングヘイローのことを「人間でいうところの恩人のような馬」と回答。

 同馬は惜しくも19年3月にこの世を去ったが、昨年のスプリンターズS(G1)をピクシーナイトで優勝した際には、「(母父に)キングヘイローの血が入った馬でG1を勝てて嬉しい。ようやく恩返しができたんじゃないかな」とコメントした経緯もある。

 また、ミスターメロディで19年の高松宮記念(G1)を制した時にも「(数日前にこの世を去った)キングヘイローが後押ししてくれた」との談話を、レース後に残している。

 そんな福永騎手にとっての「恩馬」キングヘイローの血を引くイクイノックスが、前人未到のダービー三連覇の前に最大のライバルとして立ちはだかるのも、なかなか興味深いといえるかもしれない。

「キングヘイローが福永騎手に与えた最後の試練のようなものでしょうか。福永騎手にしてもこの壁を乗り越えて武豊騎手を超えるダービー三連覇ジョッキーの称号を手に入れることが、キングヘイローへの最大の供養になるかもしれませんね」(競馬誌ライター)

 ちなみに、キングヘイローが大敗した98年のダービーを5馬身差で圧勝したのが、武豊騎手とスペシャルウィークである。

 当時は圧倒的な差を見せつけられた福永騎手ではあったが、ついにレジェンドと肩を並べ、今まさに追い抜こうとするところまできている。果たして最終関門を突破して武豊超えは叶うのか。ゲートが開かれるまでもうしばらく待ちたい。

(文=冨樫某)

<著者プロフィール>
 キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。

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