JRA藤田菜七子「最後の砦」も陥落寸前、独走する今村聖奈は何が違うのか…快進撃の裏に英才教育を施した「大物騎手」の存在

今村聖奈騎手

 今村聖奈騎手の快進撃が止まらない。

 先週末は、中京6R・3歳未勝利を4番人気レディズビークで勝利。これで5週連続の勝利となり、今週は新人騎手による最長記録である6週連続勝利にリーチをかけた。

 同期で最初に注目を集めたのは、初騎乗初勝利から2連勝の衝撃デビューを飾った角田大河騎手だったが、先週の開催を終えてライバルの8勝を大きく上回る13勝。このまま独走態勢になりそうな雰囲気すらある。

 彼女の好成績の裏には、福永祐一騎手や岩田望来騎手などのエージェントを務める小原靖博氏のバックアップも考えられるが、騎乗馬に恵まれていたとしても、しっかりと結果を残していることは今村騎手の手腕によるところが大きい。

 特に先週は、開催リーディング2位と大活躍だったローカルの新潟開催が終了し、トップジョッキーが集まる東京・中京の2場開催となったが、数少ないチャンスをきっちりとモノにした。

 また、他メディアでも取り上げられていたが、これまで逃げ切り勝ちが1度もないことにも注目したい。

快進撃の裏に英才教育を施した「大物騎手」の存在

 軽量を生かした前々での競馬も、2番手から早めに先頭に立って押し切った競馬が1度あるだけ。他は好位や中団からの差し切りが多く、既に新人らしからぬ内容といえるもの。13勝目を挙げたレディズビークも「前走の新潟は脚を溜める形の競馬をしました。我慢の練習をしたのが生きたと思います」と振り返ったように差し切り勝ちだった。

 実際、彼女の騎乗ぶりを現場で見ている関西のトラックマンによると、今村騎手の躍進には、先輩騎手である福永騎手と川田将雅騎手らの英才教育が関係しているという。

「彼女が同じ競馬場で乗っている時は、レース後に福永騎手や川田騎手といった大先輩と一緒にパトロールを見ながらアドバイスを貰っているんです。彼らも常々言っていますが、逃げるという選択肢はいざという時に使う戦法で、ほとんどは前に馬を置く形で競馬を教えながら勝つという事をメインにしています。

これは、先を見据えて馬込みで我慢することや、折り合いのつけ方を重点的に教えたり、どんな競馬にも対応できる馬に作り上げるのが目的。それを1年目の新人女性騎手がしっかり実践できているのが驚きです」

 トラックマンの話によると、彼女の長所は吸収力がとにかく素晴らしいことらしい。平然と馬込みに入ってロスのない競馬をすることもあれば、見ているこちらが「そんなに我慢して大丈夫なのか」と思うほど追い出しも余裕を持っているようだ。減量特典のある新人騎手の場合、陣営から斤量の軽さを生かして前々の競馬を求められるケースも少なくないが、彼女に関しては一つ上のステージで乗っているとのこと。

「怪我さえなければ新人賞は堅いでしょう。レース後のインタビューでも新人とは思えないような、明確な受け答えで頭の回転の速さも伺えます。これは余談ですが、話すスピードが速いので、メモを取る記者はひと苦労しているようです。あまりにテキパキこなし過ぎている感じで、そこら辺は川田騎手の影響ですかね(笑)」(前述のトラックマン)

藤田菜七子騎手

 次週で2014年に小崎綾也騎手がマークした新人最長記録6週連続Vに今村騎手が挑む一方で、先輩の藤田菜七子騎手は最近すっかり影が薄くなってしまった。

 古川奈穂、永島まなみを含む4人の現役女性騎手の中で最も多い騎乗数ながら、今年はまだ4勝と伸び悩んでいる。過去に度重なる落馬負傷で戦線離脱を経験したとはいえ、本人ももう少しやれると思っていただろう。

 女性騎手最多となる7週連続週勝利記録(騎乗機会)を持つ藤田菜七子騎手だが、この「最後の砦」を攻略されるのも時間の問題かもしれない。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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