JRA過酷な「生存競争」で若手騎手の勢力図が激変!? デビュー半年で「油断騎乗疑惑」2度のお騒がせ男も大変身…いま買える騎手、買えない騎手は誰?
今月から2歳新馬戦もスタートし、26日は宝塚記念(G1)を控える中央競馬。巷で話題のG1における1番人気馬の連敗にも注目が集まっている。春のグランプリを終えると、7月からは福島、函館、小倉へと舞台の替わり、本格的な夏競馬が始まりを告げる。
昨年、G1・5勝を挙げて大ブレイクした横山武史騎手が飛躍するきっかけとなったエフフォーリアは、2年前の夏の札幌でデビュー勝ちしていた馬。将来性豊かな2歳馬との出会いが、スターダムにのし上がった関東の若武者を後押ししてくれた。
現状からのステップアップを目指す新人や若手騎手にとって、自身の存在をアピールするチャンスが増えるのも、ローカル開催がメインとなるのも特徴である。
そう言った意味でも買える騎手、買えない騎手の見極めが重要となってくる夏競馬。上半期の総決算には少し気が早いが、今年ここまでの開催で好成績を残した騎手、伸び悩んだ騎手を振り返ってみたい。
いま買える騎手、買えない騎手は誰?
まず、今年デビューした新人騎手は、今村聖奈騎手と角田大河騎手が一騎打ちの状況に近く、こちらについては1年目ということもあり、もう少し様子見が必要か。
以降はデビュー5年目から順に遡るが、この世代は28勝を挙げてトップの西村淳也騎手が一人勝ちの状態。3人いる同期の残り2人である服部寿也騎手は2勝、山田敬士騎手は1勝と苦しい現状だ。
4年目は岩田望来騎手が断然の56勝を挙げた。なかなか勝てなかった重賞初勝利も済ませてコンプレックスを払拭し、全国リーディングでも上位に食い込んだ。オニャンコポンとのコンビで今年のクラシックを奮闘した菅原明良騎手は31勝で2位。ここまでは昨年と似た状況なのだが、団野大成騎手や齋藤新騎手は伸び悩んでいる。昨年38勝した亀田温心騎手がいまだに2勝しかしていないのは深刻だ。
3年目は秋山稔樹騎手が15勝のトップだが、成績が急落した泉谷楓真騎手の不振は特に目立つ。昨年は46勝を挙げて同期の勝ち頭だったものの、今年はまだ7勝と低迷。このペースで行けば、年間通しても昨年の半数に届くかどうかも怪しそう。
最後に触れる昨年騎手デビューした2年目は、同期騎手が8人と多い。
古川奈穂、永島まなみといった女性騎手も2人いれば、第四の横山といわれる横山琉人騎手のブレイクも話題となったこの世代。体重調整に失敗し、4月23日の福島競馬で不正改造したベストを着用したため、JRAから今月3日に7月23日まで騎乗停止の処分が科された西谷凛騎手もいる。
色々と話題に事欠かない2年目の組で、今年最も注目したいのは松本大輝騎手だ。新人騎手としてデビューした昨年は、わずか半年の間で「油断騎乗疑惑」による騎乗停止処分が2度という大失態を犯した。
しかし、今年は改心した効果もあったのか21勝を挙げ、同期トップの勝ち星を挙げるまで急成長。現段階ですでに昨年の18勝を超える大変身だ。
トップジョッキーでもミスが続けば、いつ転落しても不思議ではない競馬界。過酷な競争で生き残りを懸ける若手騎手たちの勢力図もまた、ちょっとしたきっかけで激変することもあるだろう。
これから続く夏競馬で次のヒーローに名乗りを挙げるのはどの騎手だろうか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。