JRA歴代ダービー馬が軒並み苦しんだ欧州遠征の「後遺症」…惨敗に終わったシャフリヤールと“先輩”たちとの共通点、“後輩”ドウデュースも他人事ではいられない!?

競馬つらつらより

 現地時間の15日に行われたイギリスのプリンスオブウェールズS(G1)。日本から挑んだ昨年のダービー馬・シャフリヤールは5頭立ての4着に惨敗した。日本の関係者やファンから寄せられた期待に応えることはできなかった。

 騎乗したC.デムーロ騎手はレース後に、「道中のバランスが少し悪かった、ドバイの時のような加速力が無かった」とコメント。日本やドバイでは高い瞬発力を活かして栄冠を掴んだシャフリヤールだが、欧州の中でも特段パワーを要求されるアスコット競馬場への対応は難しかったようだ。

 今秋のフランス・凱旋門賞(G1)の登録も行っているシャフリヤール。今回の出走は今後を占う試金石といえる1戦であったが、失意の結果に終わってしまった。

 こうなると不安なのが、シャフリヤールのコンディションである。

欧州遠征後、日本でG1勝利はディープとオルフェーのみ

 

 長距離輸送、慣れない環境、そして高低差20mもの急坂コース、馬体にかかる負担も相当なはずであり、今後のキャリアに与える影響も懸念される。得に気がかりなのが、過去に欧州遠征を敢行した“先輩ダービー馬”の多くが、その後に「後遺症」ともいえる不振に苦しんでいる点である。

 2000年以降に日本ダービー(G1)を制した馬の中で、後に欧州のレースに出走した馬は6頭いるが、そのうち帰国後に日本のG1で勝利を挙げたのはディープインパクトとオルフェーヴルのみであった。3冠を達成している2頭を除いた4頭は軒並みG1で勝利はおろか、3着以内に食い込むことすらできていない。

 現在も現役を続けているマカヒキはダービーを制した3歳時に凱旋門賞へ挑戦したが、14着に大敗。その後は現在までに14度G1に出走しているが、最高着順は4着に留まっている。また、現在は種牡馬として活躍するキズナも同様に3歳時に凱旋門賞に出走。帰国後は天皇賞・春(G1)に2度挑んでいるが、それぞれ4着、7着と不本意な結果に終わっている。

 マカヒキ、キズナの2頭共に欧州で出走以降、G2では勝利を挙げているもののG1では結果を残せず。海外遠征を経て、ダービー馬としての威光が失われてしまったといえる。

 更に重篤な「後遺症」に苦しんだのがディープブリランテである。

 日本ダービーを制した後に出走したのはイギリス・アスコット競馬場で行われるキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)。果敢に欧州でも随一のビッグレースへ挑んだものの、欧州特有の馬場に苦戦し10頭立ての8着に大敗。

 その後は菊花賞(G1)への出走に向けて調整が進められたが、レースを目前に控えた段階で屈腱炎を発症し引退を余儀なくされてしまう。怪我の原因を断定することはできないが、欧州遠征で負った馬体へのダメージの影響を否定することはできないだろう。

 ここまで紹介した3頭とシャフリヤールは、奇しくもディープインパクト産駒である点で共通している。それに加えて、シャフリヤールが今回挑戦したのはイギリス・アスコット競馬場でのレース。これは3頭の中でも最も早い引退となったディープブリランテと同じである。

 ディープインパクト産駒の“先輩ダービー馬”たちのその後を振り返ると、欧州遠征が馬体へ与える影響の大きさがうかがい知れる。シャフリヤールの今後のローテーションは明らかになってはいないが、まずは馬体への影響が最小限であることを願いたい。

 今秋にはシャフリヤールと共に、“後輩ダービー馬”であるドウデュースも凱旋門賞への出走を視野に入れている。これまで数々のダービー馬が苦しめられた欧州遠征の「後遺症」に2頭が苦しめられないことを願いたい。

(文=エビせんべい佐藤)

<著者プロフィール>

 98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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