伝説の新馬戦の「大安売り」に違和感、14年前に刻まれた衝撃の真実とは
各メディアでよく目にする「伝説の新馬戦」というフレーズ。一般的には、同じ新馬戦に出走していた複数の馬がG1レースを勝った際、振り返ってみると実力馬が揃ったハイレベルのレースだったという意味で使われていることが大半だ。
近年では、宝塚記念当日の阪神競馬場で行われる新馬戦(芝1800m)も注目されるようになったが、そもそも伝説の新馬戦とは何だろうか。後のG1馬が頻繁に出走していた条件という意味であればハードルも下がるが、少々安易に使われている気がしていると感じているのは筆者だけだろうか。
14年前に刻まれた衝撃の真実とは
伝説の新馬戦というレース名で開催されている訳でもなく、こういった表現はあくまで「結果的にそういってもいいくらい」の好メンバーが揃っていたという程度。やはり伝説の新馬戦という表現に最も相応しいと考えられるのは、2008年10月26日に京都競馬場の芝1800mを舞台に争われた新馬戦である。
このレースの結果は、1着アンライバルド(皐月賞・G1)、2着リーチザクラウン(日本ダービー2着・G1)、3着ブエナビスタ(G1・6勝2着7回)、4着スリーロールス(菊花賞)という驚異的な内容。偶然とはいえ、後にG1を制する3頭が出走していただけではなく、リーチザクラウンも世代トップクラスの1頭だった。
しかも、出走した11頭の内、最下位に敗れたファーエンドシュアを除く10頭が、その後に勝ち上がっており、ファーエンドシュアも地方競馬に移籍後、勝利を挙げていた。
ちなみに後のG1馬が3頭出走していたケースは、もうひとつある。それは2007年7月8日に阪神競馬場で行われた新馬戦(芝1800m)だ。このレースも1着アーネストリー(宝塚記念・G1)、2着トールポピー(オークス・G1)、3着ドリームシグナル(シンザン記念・G3)、8着キャプテントゥーレ(皐月賞・G1)といった顔触れだった。
とはいえ、先述したメンバーに比べると少々見劣ることは否めない。
また、菊花賞開催日の新馬戦は、翌年のクラシックの優勝馬を輩出するケースが多いことでも知られている。
2009年
1着ローズキングダム(日本ダービー&菊花賞2着・G1、ジャパンC・G1)
2着ヴィクトワールピサ(皐月賞・G1、有馬記念・G1、ドバイワールドC・G1)
2012年1着エピファネイア(菊花賞・G1、ジャパンC)
2018年1着ワールドプレミア(菊花賞・G1、天皇賞春・G1)
2020年1着シャフリヤール(日本ダービー・G1、ドバイシーマC・G1)
こうして振り返ると他の新馬戦に出走したメンバーに比べ、突出した傾向にあることが改めて浮き彫りになる。
勿論、これも結果論であることに変わりはないのだが、少なくとも伝説の新馬戦というフレーズを使うならこちらかなというところだ。まるで大安売りにされているようにも感じられる近年だが、14年の年月が過ぎても2008年の衝撃を超えるほどのメンバーが揃った新馬戦はなかったといっていい。
少し強い馬が出た程度で、気安く伝説の新馬戦に例えられることに対する違和感の正体は、おそらくこういうことなのだろう。