川田将雅「黄金タッグ」解散の朝日杯FS…G1連勝を懸けた両者が直接対決

川田将雅騎手 撮影:Ruriko.I

 11日に阪神競馬場で行われた阪神JF(G1)。勝ったのは川田将雅騎手が騎乗したリバティアイランド(牝2歳、栗東・中内田充正厩舎)だった。

 前走のアルテミスS(G3)では終始馬群の中に閉じ込められ、直線でもなかなか進路が開かない不利を受けて土がついたものの、今回は経験のないハイペースにも乱されることなくしっかりと折り合い、直線ではライバルたちを一瞬で置き去りにした。走破時計の1分33秒1は一昨年のソダシや2006年のウオッカと並ぶレース史上2位タイの好タイム。後続に0秒4の差をつける完勝劇で2歳女王の座に就いた。

 レース後、川田騎手は「僕の個人的なことでご心配・ご迷惑をおかけしてしまいましたが、こうして大事なところに間に合うことができましたし、リバティアイランドが勝ってくれたことで、ひとつホッとした思いがあります」とコメント。

 というのも、同騎手はレース当週の5日に新型コロナの陽性判定を受け、10日の騎乗が不可能になった経緯もあった。阪神JFが行われる11日に関しても、10日の検査の結果待ちという不透明な状態だったが、幸いにも10日に陰性の確認が取れたことで騎乗OKとなった。

 これで5月のNHKマイルC(G1)以来となる7カ月ぶりのG1勝利を掴み取っただけでなく、日曜は3レースに騎乗して2勝をマーク。騎乗数が減った中でもしっかりと白星を積み重ね、これで今年の通算勝利数は139勝に。2位の戸崎圭太騎手に12の差をつけ、自身初のリーディング獲得に向けて前進している。

 また、今年3つ目のG1タイトルというのも、騎手別で見ると単独トップ。今年は“G1初勝利”が相次いで誕生しているように、G1勝利を独占する騎手が不在。12月を迎えた段階でも、福永祐一騎手・吉田隼人騎手・川田騎手・横山和生騎手・C.ルメール騎手という5人が2勝ずつで並ぶという珍現象が起こっていた。

 そんな中、川田騎手が一歩抜け出す3つ目のG1勝利をゲット。さらに今週の朝日杯FS(G1)でも有力馬の一頭であるダノンタッチダウンの騎乗が控えており、2週連続のG1勝ちとなれば、年間リーディングに加えてG1の年間最多勝利という栄誉まで見えてくる。

「黄金タッグ」解散…G1連勝を懸けた両者が直接対決

 窮地を抜け出し、追い風に乗る川田騎手に死角はあるのか。待ったをかける存在として注目したいのが、先週は川田騎手を味方にG1勝利を挙げた中内田調教師。2戦2勝のコーパスクリスティを朝日杯FSに送り込む。

 芝1400mの新馬戦と秋明菊賞(1勝クラス)を連勝して今回が初の1600m戦となるが、前走はスタートで出遅れながらも内回りコースの短い直線を最後方から差し切り勝ち。初戦が0秒2差、前走は0秒3差とクラスは上がりながら2着馬との差は拡大しており、ポテンシャルの高さを示した。

 今回は未経験の距離になることで折り合い面の不安はあるものの、外回りコースに替わることでその末脚の爆発力がさらに増すということも考えられる。初コンビとなるD.イーガン騎手がどんなエスコートを見せるか注目したいところだ。

 “勢い”という点では中内田師も川田騎手に負けていない。今年は春の大舞台でなかなか見せ場を作ることができなかったものの、この秋はローズS(G2)の勝利を皮切りに以降の3カ月で重賞4勝の固め打ちを成功させている。

 11月はセリフォスでマイルCS(G1)を勝って今年のG1初勝利を挙げ、そして先週は2018年のダノンファンタジー以来となる阪神JF制覇を達成。なお、同一年にJRAのG1を複数回勝利するのは2014年の調教師デビュー以来はじめてのことだった。

 また、中内田厩舎といえば“2歳戦に強い”というイメージもかなり定着してきたが、今年の2歳戦の厩舎別成績を見ても、20回の出走で8勝をマーク。勝率40%という驚異的な成績を残している。

 この数字は全体トップタイとなっているものの、同数で並ぶ堀宣行厩舎は出走10回と分母は半分。さらに北海道競馬の田中淳司厩舎も同じ勝率40%となっているが、こちらは出走が5回。打数が多くても高いアベレージを残しているという点で、中内田厩舎の強さが際立つ結果と言える。

 昨日の敵は今日の友、昨日の友は今日の敵。勝負の世界では珍しくない。特に競馬においてはどれだけ強固な関係を持っている騎手や調教師、馬主であっても、共闘した数分後の別のレースでは敵同士となるのが当たり前となっている。

 阪神JFの激闘から1週間、同じ阪神・芝1600mで行われる2歳王者決定戦。今週は歓喜を分かち合った川田将雅騎手と中内田充正調教師によるガチンコ勝負に注目だ。

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