【京都記念（G2）展望】武豊「ダービー馬としてのメンツがある」、復活勝利はドウデュースか、エフフォーリアか…

　12日、阪神競馬場では春の古馬中長距離戦線を占う上で重要な伝統の一戦、京都記念（G2）が行われる。今年は3頭ものG1ウイナーが集結して、例年以上の注目を集めるだろう。

　主役を務めるのは、昨年の日本ダービー（G1）を勝ったドウデュース（牡4歳、栗東・友道康夫厩舎）。デビューから武豊騎手とのコンビで8戦4勝、うちG1を2勝している実力馬だ。

　2歳時にはデビュー3連勝で朝日杯FS（G1）を制したが、3歳の春は弥生賞（G2）と皐月賞（G1）をとりこぼし、ダービーでは3番人気まで評価を落としていた。

　迎えた大一番で武騎手が取ったのは、皐月賞の時と同じ後方待機策。道中は1番人気のダノンベルーガを前に見ながら、2～3馬身後ろに2番人気イクイノックスを従えるという展開だった。

　人気3頭がそのままの隊列で直線を迎えると、ドウデュースは大外へ。残り400mを切ったところで武騎手の右ムチが飛ぶと、あっという間に抜け出して、最後は外から迫るイクイノックスの急追をクビ差凌いで栄光のゴールに飛び込んだ。

　その後は日本競馬の悲願達成へ、フランス遠征を敢行。9月のニエル賞（G2）で始動するも、ロンシャンの深く重い芝にエンジンは点火せず4着に敗れた。続く本番の凱旋門賞（G1）ではレース直前の豪雨でさらに重くなった馬場に苦しみ、最後方追走から直線で1頭交わすのがやっとだった。

　その後はジャパンC（G1）での復帰を目指したが、体調が整わず回避。昨年12月中旬に京都記念から始動することが明かされると、同月下旬に栗東トレセンに帰厩し、1か月以上かけてじっくりと乗り込まれてきた。

　3週前、2週前、1週前とそれぞれ栗東CWで追い切られ、82秒8-11秒6→81秒5-11秒4→80秒3-11秒2をマーク。6ハロンとラスト1ハロン時計を見る限り、良化途上なのは明らかだろう。

　1週前追い切りに跨った武騎手は『サンケイスポーツ』の取材に対し、「まだ休み明けの1週前という感じだったけど」と物足りなさを認めつつも、「このひと追いでさらに上がってくると思います」と自信を見せ、「ダービー馬としてのメンツもあるし、仕切り直して頑張りたい」と意気込んだ。

　国内復帰初戦でダービー馬の意地を見せることができるのか。武豊騎手にとっても2023年を占う一戦になりそうだ。

　ドウデュースよりも1つ多いG1を3勝しているエフフォーリア（牡5歳、美浦・鹿戸雄一厩舎）は有馬記念（G1）以来の競馬を迎える。

　思い起こせば2021年はエフフォーリアの年だった。春は無敗のまま皐月賞を制覇。秋は古馬相手に天皇賞・秋（G1）と有馬記念を制して、年度代表馬にも輝いた。

　ところが昨年は初戦の大阪杯（G1）で9着に敗れると、宝塚記念（G1）が6着、秋は唯一出走した有馬記念で5着と不完全燃焼のまま1年を終えた。

　春2走の敗因として、阪神への長距離輸送が取り上げられたが、3度目の遠征となる今回は陣営にも秘策があるという。今回は最終追い切り後の金曜日に栗東に移動し、栗東から阪神へは当日輸送も視野に入っているとのこと。まだ構想段階というが、陣営の試行錯誤は果たして実るか。

　前走後はノーザンファーム天栄に放牧に出されていたが、先月25日に帰厩。1週前追い切りは横山武史騎手を背に、3頭併せの真ん中から6ハロン83秒3-12秒1をマークして復調をアピールした。

　1年で天国から地獄へと転落したエフフォーリアが早熟説を払拭するためにも、陣営が欲しいのは“復活勝利”だけだろう。

　昨年12月の中日新聞杯（G3）で“復活勝利”を飾ったのは、21年のホープフルS（G1）覇者キラーアビリティ（牡4歳、栗東・斉藤崇史厩舎）である。

　昨年春は、ぶっつけで臨んだ皐月賞で13着に惨敗すると、続く日本ダービーが6着、さらに秋初戦のアルゼンチン共和国杯（G2）では2番人気で8着とG1馬らしくない走りが続いた。

　その後はローカルのハンデG3中日新聞杯で再起を図ると、5番人気という低評価に反発。テン乗り団野大成騎手の見事な手綱さばきもあって、鮮やかな差し切りで久々の勝利をつかんでいる。

　今回は団野騎手に代わってB.ムルザバエフ騎手が鞍上を務める。これまで先行して結果を出している騎手だけに、スタートさえ決めれば、ある程度前で競馬を進めることになりそう。阪神で開催された過去2年の京都記念では、馬券に絡んだ6頭のうち5頭は4角3番手以内に先行していただけに、まずは好スタートを決めて、ドウデュースとエフフォーリアより前につけたいところだろう。

　昨年の青葉賞（G2）覇者で、日本ダービーでも5着に好走したプラダリア（牡4歳、栗東・池添学厩舎）にもチャンスはある。

　春の充実度から昨年の秋は主役級の活躍も期待されたが、神戸新聞杯（G2）で8着に敗れると、菊花賞（G1）でも7着と精彩を欠いた。その後は約3か月の間隔を空けて日経新春杯（G2）で復帰。ヴェルトライゼンデに「クビ＋クビ」差の3着に入って復調気配を示している。今回の鞍上はケガから戦列に復帰予定の池添謙一騎手が務める。

　昨年6月のマーメイドS（G3）で重賞初制覇を飾ったウインマイティー（牝6歳、栗東・五十嵐忠男厩舎）も侮れない存在だ。

　昨秋は京都大賞典（G2）でヴェラアズールの3着に好走するも、エリザベス女王杯（G1）で16着に惨敗。ところが、前走の有馬記念では大健闘の6着に好走している。5着エフフォーリアと1馬身半差だったことを考えれば、ここでも上位勢と力差はない。

　先行馬有利なレースで展開のカギを握るのは、過去に逃げて結果を残している次の3頭だろう。

　昨年はブービー12番人気でノーマークの中、渋った稍重の馬場を味方に逃げ切り勝ちを収めたアフリカンゴールド（セ8歳、栗東・西園正都厩舎）。メンバーが大幅に強化される今年もハナにこだわるか。

　矢作芳人厩舎はしぶとさが売りのユニコーンライオン（牡7歳）とキングオブドラゴン（牡6歳）の2頭出し。

　前者は今回と同じコースで行われた21年の宝塚記念で2着に逃げ粘り、2走前の福島記念（G3）で復活の勝利を挙げている。単騎逃げの形になればなかなか止まらないはずだ。後者の方は、オープン昇級後は苦戦が続いていたが、前走の日経新春杯で2番手から競馬を進めて2着に好走。今回も無理せず先行策で一発を狙う。

　豪華メンバーがそろった今年の京都記念は、12日の15時35分に発走を予定している。