新種牡馬「大苦戦」はレイデオロだけじゃない? 社台の希望「サンデーサイレンスの再来」が早くも正念場
今年は7月10日と11日の2日間にわたって開催される、世界最大級の競走馬のセリ市「セレクトセール」。昨年は2日間ともに落札総額で過去最高記録を更新するなど、バイヤーたちの熱戦も年々激化している。
同セリは過去にも多くの名馬を輩出した実績を持ち、今年のG1戦線でも2020年・1歳馬セールの出身であるジャスティンパレスが天皇賞・春(G1)を制覇。国内だけでなく、3月には2017年の当歳馬セールで取引されたウシュバテソーロがドバイワールドC(G1)制覇という偉業も成し遂げている。
加えて、1年前の1歳馬セールで全体最高価格となる4億9500万円(税込)を叩き出したモシーンの2021ことダノンエアズロックが6月11日の新馬戦で単勝1.4倍の支持に応える快勝を挙げ、牝馬の最高額2億3100万円を記録したコーステッドの2021ことボンドガールも6月4日に新馬戦を勝ち上がった。こうした“出身者”たちの活躍も相まって、今年もオーナーたちによる戦いはより一層熱を帯びそうだ。
また、セール直前のアピールという点では、種牡馬の勢いも落札価格に直結する重要な要素となる。
例えば、すでに発表されている上場馬のリザーブ価格を見てみても、1歳馬では3頭の7000万円というのが最高価格となった中、そのうち2頭は今をときめくキタサンブラックの産駒であった。
当歳馬も含めて5000万円以上の値が付いている馬は計17頭いるうち、実に4頭が父・キタサンブラック。これはエピファネイアと並ぶ最多タイとなっており、セリの開幕前から種牡馬・キタサンブラックの充実ぶりがよく表れている。
その一方で、心配の声が多数上がっているのが今年デビューの新種牡馬・レイデオロの出遅れだ。
今年6月の新馬戦開幕から1カ月が経った現段階で8頭がデビューを果たした中、勝ち上がった馬はまさかのゼロ。その成績は【0-0-1-7/8】というかなり厳しい船出となった。
9日の中京競馬場では、5Rの芝・2000mの2歳新馬戦で注目馬・ラケダイモーンがスタンバイ。こちらは1年前のセレクトセールで2億4200万円(税込)という高い評価を受けた有望株で、レイデオロ初年度産駒の大将格として期待を集めている。そういった背景もあり、本馬の結果が“後輩”たちの命運を握ると言っても過言ではないだろう。
「サンデーサイレンスの再来」が早くも正念場
そんなレイデオロの陰に隠れる格好となってあまり目立ってはいないのだが、実はもう1頭の“期待の新種牡馬”にも暗雲が立ち込めている。米国の芝G1を計5勝、「2019年エクリプス賞・年度代表馬」の看板を引っ提げて日本にやってきたブリックスアンドモルタルだ。
社台ファームの代表・吉田照哉氏が“ポスト・ディープインパクト”の時代を見据えて購入してきた期待株は、デビュー前の産駒に携わった牧場関係者から「サンデーサイレンスの再来」という声も上がるほどの評判の高さが話題となった。
その期待の通り、6月3日の阪神競馬場で行われた“世代最初の新馬戦”でブリックスアンドモルタル産駒のテラメリタが快勝を収め、翌週は東京で同産駒のゴンバデカーブースが新馬勝ち。産駒デビュー2週連続勝利という、これ以上ないスタートを切った。
こうして出だしは鮮烈なインパクトを残したのだが、実はその後に続く新星は現れていない。
気が付けば現在6連敗中となっており、中でも気になるのが産駒たちの“レースぶり”である。同産駒で勝利を挙げた2頭というのは、いずれもすんなりと先手を取っての逃げ切り勝ちだった。どちらも通過順は「1-1」となったのに対し、敗れた7頭はすべて2番手以下から運んで前を捕らえきれないか、あるいは後方から差される形で敗れているのだ。
しかも、勝った2頭が新馬戦で戦った相手は、現在4頭が未勝利戦に出走して勝ち上がった馬はゼロ。馬券に絡んだ馬もおらず、メンバーレベルに疑問符が付くうえでの逃げ切り勝ちとなれば、その評価も懐疑的になってくる。
加えて今週末は産駒の出走予定馬がおらず、セール直前の“もうひと押し”も叶わぬ状況となった。
昨年は当歳馬セールでアウェイクの2022が3億4100万円(税込)という高値をつけたことも話題となったが、産駒デビューを経て迎える今年は果たしてどうなるか。2日間で計19頭が上場予定の「サンデーサイレンスの再来」、ブリックスアンドモルタル産駒の“リアルな評価”に注目だ。
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