海外遠征は「宇宙に行く感覚」なぜ園田の星イグナイターはサウジ遠征ではなくフェブラリーSを選んだのか?
昨年2年連続のNAR年度代表馬に選ばれたイグナイター(牡6歳、園田・新子雅司厩舎)がフェブラリーS(G1)に出走することが発表された。
イグナイターは前走のJBCスプリント(G1)で圧倒的1番人気に支持されたリメイクら中央の強豪を抑え勝利。デビュー当初こそ中央所属だったものの大井に移籍、そして大井から園田へと転厩し、兵庫県競馬所属で初のG1馬となった。
そんな「園田の星」はサウジアラビアのリヤドダートスプリント(G3)にも登録しており、サウジ遠征とJRA・G1のどちらを選択するのか注目されていた。
リヤドダートスプリントは、G3ながら1着賞金が日本円にして約1億2000万円でフェブラリーSとほぼ同額。リメイクなどダート重賞馬はもちろん、芝の重賞勝ち馬ジャスパークローネや二刀流で頭角を現しつつあるバスラットレオンらも登録していた。
オーナーの野田善己氏はサウジ遠征に挑戦したい気持ちはあったものの、新子師はじめ関係者の意見を聞きフェブラリーSを選択。「競走馬として最も充実期に入っている今だからこそ、どうしてもG1のタイトルを取らせたい」とあくまでG1戴冠のチャンスを優先した。
またイグナイターの上半期目標は今年からG1に昇格したさきたま杯(G1)としており、「サウジに行けば春がどうなるか分からなくなる」のも理由の1つのようだ。
海外遠征は「宇宙に行く感覚」
野田氏はSNSで「検疫の問題等未整備な部分も多くJRA勢が海外に行くのが兵庫からでは宇宙に行く感覚に近いです」と海外遠征が一筋縄では行かない旨の発言をしている。
近年海外で活躍した地方所属馬と言えば昨年のマンダリンヒーローだろう。大井競馬所属ながらアメリカのサンタアニタダービー(G1)で2着と快挙まであと一歩に迫った。
しかしマンダリンヒーローの所属する大井競馬は遠征先のサンタアニタ競馬場と友好協定を結んでおり、それなりの遠征先情報やサポートは得られていたはずだ。
そもそも大井競馬は地方競馬の雄。「世界のトップ100G1競走」に選ばれた東京大賞典(G1)を筆頭に格の高いレースが多く、売上高も園田・姫路競馬合算の2倍近い。運営規模を比較すればマンダリンヒーローとイグナイターの環境を同列に語るべきではないだろう。
実はイグナイターのフェブラリーS出走は兵庫県競馬所属馬として初の中央ダートG1出走。そして初の国際格付けG1出走でもある。
またイグナイターが勝利できれば99年メイセイオペラ以来25年ぶりの地方馬による中央G1制覇という快挙。そして野田氏が望む史上初の3年連続NAR年度代表馬という夢にも一歩近づけるだろう。
前走で手綱を取った笹川翼騎手が規定により騎乗できないため、今回は西村淳也騎手が鞍上を務める。多くの有力馬とともにトップジョッキー達がサウジ遠征している状況で、コンビを組むのが今年早くも重賞2勝をあげているホープというのは心強い。野田氏も「西村騎手は尼崎出身なのでチーム兵庫です」と信頼している様子。
イグナイターにとって今回の挑戦は非常に意味深い。「チーム兵庫」とともに挑む「園田の星」が地方所属馬の強さを改めて感じさせてくれるか注目だ。
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