武豊、村山明「胸を借りる」のすれ違い。後のG1「11勝馬」が単勝272.1倍の珍事…フェブラリーS(G1)史に残る「大失態」は何故起こってしまったのか
「胸を借りる」という言葉がある。
語源は相撲のぶつかり稽古であり、下位の力士が上位の力士の胸を目掛けてぶつかっていくことから「胸を借りる」と言われるそうだ。今では相撲界だけでなく、格下が格上に挑む際、相手に敬意を持って用いられる。競馬界でもよく見かける言葉だ。
ただ、この「胸を借りる」を使う際には謙遜の色も多分に含まれている。つまり、自分が相手より実績などで劣る格下であることは確かだが、それが「=勝てない」とは限らないということだ。
実際には実績通り格下が敗れることがほとんどだが、例えばアイアンバローズとジャスティンパレスの兄弟対決が注目された昨年の阪神大賞典(G2)では、弟ジャスティンパレスの杉山晴紀調教師が「現状、胸を借りる立場」と自分たちが格下であることを強調。
しかし、レースではジャスティンパレスが単勝3.1倍の人気を集め、アイアンバローズは単勝28.7倍と大きな差がついた。結果はご存知の通り弟が勝利し、ジャスティンパレスは勢いそのままに春の天皇賞馬にも輝いている。
また、2019年の有馬記念(G1)でも、その年の菊花賞馬ワールドプレミアで挑んだ武豊騎手が「完全なチャレンジャーで胸を借りる立場。史上最強と言っていいようなメンバー」と相手に敬意を払うコメントをしていたが、レースでは最後方から抜群の末脚を発揮しての3着。勝ったリスグラシューにこそちぎられたが、堂々の戦いぶりを見せたワールドプレミアは2年後の天皇賞・春(G1)で2つ目のG1タイトルを手にしている。
これだけを見ても、杉山晴調教師や武豊騎手の「胸を借りる立場」は大いに謙遜の色があったことがわかる。自分たちが格下であることは確かだが、十分な逆転の期待を持ってレースに挑んでいたということだ。
結果的に幸い、ジャスティンパレスの阪神大賞典が2番人気1着、ワールドプレミアの有馬記念も4番人気3着と人気を1つ上回っただけ。大レースの有力馬ということで、各マスコミもしっかりと取材し、充実した記事として取り上げたからこそ、全国の競馬ファンが「胸を借りる立場」発言に込められた「謙遜」をしっかりと汲み取ることができた結果といえるだろう。
しかし、この謙遜が目に見えない繊細なものである以上、必ずしも「胸を借りる立場」に込められた真意が届くわけではない。
相手と直接話しているわけではない我々競馬ファンは所詮、記事を通じた活字でしか情報を読み取ることしかできないのだ。
「ここ2戦のレースぶりが一息だし、メンバーも強力だから……」
今からちょうど10年前のフェブラリーS(G1)に駒を進めたコパノリッキーの村山明調教師は、まさに「胸を借りる」といった様子だった。
それもそのはず、前年の兵庫チャンピオンシップ(G2)で重賞初勝利を飾ったコパノリッキーだったが、その後に骨折……。復帰後はOPを2走したが、それぞれ10着、9着と、かつての面影を完全に失っている状況だったからだ。
だが、G1史上2位の単勝高配当2万7210円は、こうして生まれた。
レースは2番手から力強く抜け出した最低人気のコパノリッキーが、ホッコータルマエ、ベルシャザールといった当時のダート王を引き連れて堂々のG1初制覇。それだけでもマスコミや競馬ファンにとっては「黒歴史」と言えなくもないが、あろうことかコパノリッキーはこの勝利を皮切りにG1級を11勝も挙げる歴史的名馬だったのだ。
一体何故、コパノリッキーはここまで評価されなかったのか。そして、何故いきなり勝てたのか――。当時を知る『ホースメン会議』の関係者に話をうかがってみた。
「1つ言えるのは当時、ファンが受け取ることができた『コパノリッキーに関する情報』が本当に少なかったことが挙げられます。というのもコパノリッキーは賞金不足で抽選対象の身であり、出否すら不透明な立場だったからです。
出走すら不透明な上に、仮に出走できたとしてもOPで2連敗中(10着、9着)の上、騎乗した内田博幸騎手が『追ってからの反応がない。負けるにしてもここまでとは』とコメントするなど大きな期待が持てない(読者の関心が小さい)となれば、どうしてもマスコミの取材も後回しにされがちです。
そんな中で、いざ話を聞きに行っても村山調教師は慎重な発言ですし、肝心の鞍上の田辺裕信騎手がまだG1未勝利の若手。ここまでマイナス情報が揃うと、いよいよ本格的に期待薄かと思ってしまうのも無理ないと思います。
言ってしまえば、マスコミやファンから半ば無視された状況で生まれたのが、後のG1級11勝馬が最低人気の単勝272.1倍という異常なオッズだったのかもしれません」(ホースメン会議関係者)
抽選対象だったということは、コパノリッキーのフェブラリーS出走が確定したのは、レース3日前の木曜日ということになる。時間の限られている中で、当然コパノリッキーに関する記事も掲載されたが、元々が期待薄ということもあって、やはりその扱いは小さかったに違いない。
だが、その一方で『ホースメン会議』が掴んだ手応えは「まるで違った」という。
「実は、コパノリッキー陣営はこの中間から調教内容を大きく変えていました。これまで坂路が主体だったコパノリッキーですが、このフェブラリーS前には積極的にCウッドで長めに乗り込まれることが増えました。
最初はそこまで大きな変化はないように思えたのですが、乗り込みを重ねていく内、じょじょに動きが良化。最終追い切りも栗東のCウッドで行われて、異例の7ハロン追いとかなり長めに追い切られています。
時計こそ地味でしたが、馬なりで余力は十分。村山調教師も『じっくり乗り込んで状態は上向き』と話していましたが、この時点でホースメン会議としても『評価を見直す必要がある』という話になったのを覚えています」(同)
当時、3歳春までは世代でもトップクラスに位置付けされていたコパノリッキーだったが、3歳秋から成績が急降下したため早熟説が流れていた。しかし、これはあくまで一時的なスランプであり、フェブラリーS直前になってようやく「本来の姿」を取り戻しつつあったというわけだ。
ちなみに3歳春の兵庫チャンピオンシップを6馬身差、時計にして1秒差で圧勝しているコパノリッキーだが、この時の2着がフェブラリーSで3番人気に評価されていたベストウォーリアだった。言い換えれば、本来のコパノリッキーはフェブラリーSの3番人気に6馬身差で圧勝できる実力の持ち主だったというわけだ。
終わってみれば、単勝272.1倍のコパノリッキーが1着で、単勝7倍のベストウォーリアは13着。ただ2頭の着差は0.9秒差と、兵庫チャンピオンシップの1秒差とほぼ同じだった。これだけを見てもコパノリッキーが短期間で急成長したというよりも、元の力を発揮できる状態になったと言えるだろう。
その後、コパノリッキーは続くかしわ記念(G1)も優勝。帝王賞(G1)こそ2着に敗れたが、JBCクラシック(G1)を3馬身で圧勝するなど、一気にスターダムへのし上がっている。
つまり、コパノリッキーの勝利はたまたま偶然が重なったマグレなどではなく、完全に実力通りだったということだ。この単勝272.1倍は、筆者も含め全国の競馬ファンの失態だったと言わざるを得ないだろう。
近年でもイクイノックスやキタサンブラック、ウシュバテソーロなどG1を何勝もした馬は数多くいるが、その中で単勝100倍を超える“屈辱”を味わった例など、本馬を置いて他にいるだろうか。
コパノリッキーの2014年のフェブラリーSは、それだけ異常だったということだろう。
ただ、そんな中でも『ホースメン会議』のようにマスコミの情報に頼らず、自分たちで直接取材することができていれば、コパノリッキーの変化に気付けたかもしれない。仮に、もしコパノリッキーに関するニュースがもっと充実していれば、少なくとも単勝272.1倍ということはなかったはずだ。
このレースだけを見ても、独自に取材し情報収集できる『ホースメン会議』のようなプロ集団と、マスコミのニュースを頼る他ない我々競馬ファンの間には、埋めようがない「違い」があると言わざるを得ない。
もしも今年のフェブラリーSに、かつてのコパノリッキーのような存在が眠っていれば、我々競馬ファンには手の施しようがないと言えるだろう。
ただ、幸いなことに今年のフェブラリーSでは『ホースメン会議』が、フェブラリーSの穴馬を無料でピックアップしてくれるという。それも監修は有馬記念(G1)や菊花賞(G1)など、数多くの大レースを制した元JRA騎手の東信二氏だ。
『ホースメン会議』の関係者によると、東氏曰く「チャンピオンズCのウィルソンテソーロのような穴馬がいるので楽しみにしていてください」とのこと。
チャンピオンズCのウィルソンテソーロといえば、単勝万馬券級の12番人気ながら2着に好走し、三連単190万馬券の立役者になった。さすがに単勝272.1倍のコパノリッキー級とはいかないかもしれないが、十分な高配当が期待できそうだ。
今年もキングズソードやドゥラエレーデなど連日のニュースで注目を集めている有力馬がいる一方で、ほとんど無視されているような馬が何頭かいる。果たして、元JRA騎手の東氏が選ぶのは、どんな穴馬か。
今から週末が楽しみでならないし「無料」とくれば、乗らない手はないだろう。
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※本稿はPR記事です。
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