「目も開けていませんでした」M.デムーロが振り返った9年前のラストウィーク…全姉の他界からひと月後に生を受けた「新潟マイスター」の記憶

2015年の新潟記念を勝ったM.デムーロ騎手 撮影:Ruriko.I

「最後は勝ったかわかりませんでした。目も開けていませんでした」

 時は遡ること2015年9年。夏の新潟開催フィナーレとなった新潟記念(G3)をアタマ差の接戦で制したM.デムーロ騎手は、レース後にそうコメントを残した。騎乗していたのは7歳馬のパッションダンスだ。

 ディープインパクト産駒のパッションダンスは、金子真人オーナーがセレクトセールにおいて9450万円で購入。全姉に重賞4勝を挙げ桜花賞(G1)でも2着に好走したアドマイヤキッスがいる血統馬である。ちなみに、姉は馬房内のアクシデントで開放骨折を発症すると予後不良の診断が下され、残念ながら2008年3月に安楽死の処分となった。それから約1ヶ月後に生を受けたのが弟のパッションダンスである。

全姉の他界からひと月後に生を受けた「新潟マイスター」の記憶

 本馬には、姉が届かなかったビッグタイトル制覇の期待がかけられたことは想像に難くない。2011年2月のデビュー戦を1番人気で快勝。しかし、2戦目の京都新聞杯(G2)で6着に敗れた後に故障が判明。約1年の休養を経て復帰を果たすと、2013年5月の新潟大賞典(G3)で初重賞制覇。同年秋にはG1戦線での活躍も期待されたものの、再び脚部不安により1年半以上の戦線離脱を余儀なくされることとなる。

 2014年暮れの金鯱賞(G2)でカムバックを果たしたもの14着に大敗。その後も5連敗を喫したものの、すべて0秒5差以内に入っており、決して悪い内容でもなかった。そして完全復活かつ2年4ヶ月ぶりの勝利を目指し、新コンビのデムーロ騎手と臨んだのが2015年の新潟記念だった。

 毎年のように人気が割れるハンデ重賞だが、この年は例年にも増して主役不在の混戦ムード。1番人気に推された3歳馬のミュゼスルタンでさえ単勝オッズ6.1倍だったことからもそれが窺えるだろう。パッションダンスは同9.1倍の6番人気でゲートは開いた。

 レースは大外18番枠からスタートしたアーデントがハナを切る。柴田大知騎手騎乗のマイネルミラノが2番手。パッションダンスとデムーロ騎手はインコースの5番手付近で前を見ながら競馬を運ぶこととなる。

 最後の直線に向いて馬群が内外いっぱいに広がると、馬場の真ん中からマイネルミラノが堂々と抜け出して先頭に立つ。その背後からパッションダンスも迫るものの、なかなか差が縮まらない。そのままマイネルミラノの押し切り濃厚かと思われたところで、パッションダンスが外から強襲し2頭ほぼ並んだところでゴール。結果はアタマ差でパッションダンスとデムーロ騎手に軍配が上がった。

 デムーロ騎手のレース後コメントは冒頭の通りだが、マイネルミラノに騎乗していた柴田大騎手も「完璧に作戦通りに乗ることができました。あれで差されたら仕方ないです」と、敗れはしたもののベストを尽くした旨のコメント。6週間にわたって開催された夏の新潟競馬を締めくくるにふさわしい、手に汗握る名レースだった。

 2つ目の重賞タイトルを手にしたパッションダンスは翌年、2度目の新潟大賞典制覇を達成。その後は新潟記念連覇を目指して調整されていたものの、骨折を発症しターフを去ることとなった。G1を制することは叶わなかったが、新潟での重賞3勝は現在のところ史上最多タイ記録となっている。

 そんな新潟マイスター・パッションダンスが新潟記念を制してから9年。今年も夏の新潟ラストウィークに熱いドラマが繰り広げられることに期待したい。

GJ 編集部

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