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角居勝彦調教師が「死刑判決を待つ心境」と語った伝説の天皇賞・秋。ウオッカとダイワスカーレットに審判が下されるまでの「13分間」

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 戦前、角居調教師はそうスタッフを鼓舞していたという。この天皇賞・秋まで1勝3敗。初顔合わせとなった昨年のチューリップ賞(G3)こそ、互いに探り合いのレースで花を持たせてもらったが、本番の桜花賞(G1)、そして秋の秋華賞(G1)では完敗を喫していた。さらに年末の有馬記念(G1)でも光を放ったのはダイワスカーレットだった。

 その結果、ウオッカは牝馬としては64年ぶりとなる日本ダービー(G1)制覇という歴史的偉業をやってのけながら、年末表彰では特別賞に留まった。最優秀3歳牝馬にはダイワスカーレットが選ばれた。

 あれから約1年。ウオッカは鞍上に天才武豊を招き、秋初戦の毎日王冠(G2)をステップにこれ以上ない仕上がりにあった。角居調教師も「過去を含めて、一番出来ている状態」と、まさに人事を尽くして天命を待つ境地だった。

 しかし、検量室前の「1着馬」が入る枠にはダイワスカーレットと安藤騎手、それに管理する松田国英調教師を始めとする関係者の姿があった。まだ写真判定が続いていたが、電光掲示板に表示されているのは、必然的に馬番が若いダイワの方が一番上になる。武豊騎手とウオッカは「2着馬」の枠に収まっていた。

 写真判定は、まだ終わらなかった。ターフビジョンには、何度も何度もゴール前のシーンがリプレイされる。レース終了後から、一体何分が経過したのだろうか。緊迫した時間だけが独特の静謐さを纏い、ただ音もなく過ぎていった。

「これで負けたら――」。より負けられないのは、角居調教師とウオッカの方だった。互いに現役を代表する名牝に上り詰めたものの、勝敗は1勝3敗。春に脚を痛めたダイワスカーレットが7カ月ぶりのレースであることに対して、こちらはデビュー以来絶好の仕上がり。決戦の地は、最も得意とする東京競馬場。なりふり構わず勝ちに行った分、負けた時の覚悟もしていた。「――もう二度とダイワスカーレットには勝てない」

 その時の心境を角居調教師は「死刑判決を待っているような心境」(Number/文藝春秋より)と語っている。相手は3年間も世話になった師匠の松田国英であり、心から尊敬しているからこそ自信はなかった。

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