麻雀界をリードする女流プロ雀士・二階堂姉妹の特別インタビュー(前編)-二人にとって「生きる」とは何なのか、その「流儀」を語る-
「なりたい職業ベスト10にプロ雀士」は決して夢物語ではない
この話に入った途端、瑠美プロは「入れたいよね」と目を輝かせた。これまで黙って話を聞いていた亜樹プロも同じだったようで「入れたいね」と笑顔で応じる。ただ、それが決して”夢”などではなく、具体的な”目標”であることは瑠美プロの話を聞いてすぐにわかった。
瑠美:プロ野球とまでは言いませんが、多くのスポンサーがつき、頑張っている人たちにちゃんとお金が行き届くことが理想です。(成功しているプロスポーツは)あれだけたくさんの人が熱中するわけですから、(プロ麻雀も)そういうものになったらいいなと思います。ただ、実際はまだまだ全然なので、なんとか……なんとかしたい。(様々な可能性を)模索して、麻雀業界全体で底上げをしている途中だとは思っています。
――そういうことができれば「なりたい職業ベスト10」も見えてくる。
瑠美:プロ野球みたいに一軍で野球をされている方々がある程度優遇される一方で、二軍の方々も野球に集中できるだけの収入を得られているように、プロ雀士もプロ野球と同じとまでは言わないですが、全体がある程度安定した収入を得られるような環境を作っていければ。そうしてプロ雀士が増えれば、もっと多くの人に麻雀を楽しんでもらえる機会が増える……。
亜樹:面白いよね。
瑠美:面白いと思います。でもそれには、私たちだけではなくて、麻雀界全体で動いてもらうことが大事だと思いますね。
実際にプロ麻雀に限らず、マイナー域に留まっている競技はプロ選手がそれだけでは食べていけない現実がある。プロ麻雀界も近年は、かなり整備されてきた印象を受けるが、それでも副業を抱えているプロ雀士は多く、実際に二階堂姉妹も広報も兼ねたパチンコやパチスロの番組出演など幅広い活動を続けている。
その上で我々が今後、麻雀に関する情報を発信していく際「麻雀の最大の魅力」を瑠美プロに語ってもらった。
瑠美:老若男女問わず、誰でも同じ卓につけるのが魅力だと思います。「麻雀で一つとして同じ局はない」と言われているように、座る人が違えばいろんなドラマを見せられる。7歳でも90歳でも、ルールさえ理解していれば誰でもできます。そういう競技ってあまりないと思うので、そこが一番の魅力ではないかと。
――スポーツ的な側面を持っていながら、体を動かさないことが強みになる。
瑠美:そうですね。脳さえあれば(笑)(極端に言えば)片手でも打てるのが麻雀。後は、考えるだけで卓を動かせるような設備があれば、理想かもしれないですね。麻雀をギャンブルというイメージから脱却させて、(雀卓を)一家に一台というか、どこでも麻雀ができる環境があれば。それがネットでもいいんですけど、やっぱり家族で囲める、友達同士で囲めるっていうのがいいですね。そうなれば、麻雀がもっと多くの人に浸透するはずです。
今流行りの健康麻雀に代表されるように、老人ホームなどの介護施設で麻雀は欠かせないコミュニケーションツールとなっている。高齢化社会が進み、これだけ麻雀をできる高齢者が多いのだから一家で麻雀が打てる家族を増やすというのも、普及活動に有効な手段であると感じた。
二階堂姉妹が持つ、いや、二階堂姉妹だからこそできる「麻雀をギャンブルから文化へ昇華させる活動」は今も確かな具体性を持って続けられており、本著『明日は、今日より強くなる 女流プロ雀士 二階堂姉妹の流儀』を世に解き放ったのも、その一環にあたるということだ。(後編に続く)
(文=浅井宗次郎)
『明日は、今日より強くなる 女流プロ雀士 二階堂姉妹の流儀』(KADOKAWA)