多井隆晴が『多井熱』で語る麻雀界の真実。最強プロが見た「地獄」本当に怖いのは……プロ2000人全員「勘違い」と襲来するブーム終焉の時
――ヒールをやれば面白いと思える、今の若手プロはいるのか。
多井:何人が目ぼしい人はいますけど、所詮はまだ僕のモノマネというか、オリジナル性がない。ヒールって負けっぱなしだと受け入れられないので、憎まれるくらい強くないと。人気の無いヒールはいるけど、それじゃあ意味がないよね。単なる独りよがりなので。
『RTDリーグ』に出てる松本吉弘(日本プロ麻雀協会)くんとか、キャラ的には可能性があると思いますよ。あとはもっと実績を積んで麻雀も強くなきゃいけないけど、何か必殺技というか……プロレスだってあるじゃないですか。彼は名刺代わりになる戦術本とかも出してないですし、まだちょっとキャラが薄いですよね。
ただ、まだ若いので凄く大きなチャンスがあると思う。ルックスも良いし、スターになるかもしれない。見た目とギャップのある好青年だし、あの道をそのまま行ってほしいですね。あれが天狗になったりしたら、先輩である僕らのせいでもある。僕らがいつまでも高い壁じゃないと。
――開催中の『RTDリーグ』で、その辺りは。
多井:もうボコボコにしてやりますよ(笑)。それが先輩としての愛なので。もう少し試練を与えてあげないと。彼だけじゃなくて、他の若手も含めた麻雀業界のためにもね。
もっとキャラ付けして、解説でイジって、いろいろと盛り上げてあげようかなと思ってますね。団体は違うんですけど「麻雀業界全体でスターは作るもの」なので。僕らが次のスターを作ってあげないと。そこはすごく考えていますね。
――ヒール役を演じてファンに嫌われてもいい。
多井:「一番怖いのはファンから嫌われることじゃなくて、無関心」なんですよ。僕は、日本プロ麻雀連盟にいた頃一番上のリーグにいて、理事もやってて、仕事も毎日来てという感じだったんですよ。それが連盟を辞めた瞬間に仕事が全部なくなって、ファンの人も僕を見てくれなくなって……。
すべてなくなったんですよ、仕事が。その辺のサラリーマンの方よりも稼いでたんですけど、一気にゼロになって。「どうしよう、どうしよう」って……一度、そういう地獄を見ているんですよね。
ただ、これが大きいんですよ。あれがなかったら、今の僕はないですね。一度、地獄を経験してからの今なので、もう仕事の、ファンの、取材のありがたみ、全部身に染みてわかるんです。昔は若気の至りもあって、こういった取材でも「私の考えを聞いてくれて、ありがとうございます」っていう姿勢が足りなかった。今は嬉しくて仕方ないんですよ。僕に興味を持ってもらっていることが。
連盟を辞めたって「多井隆晴というプロに価値や魅力があれば、あんなことにはならなかったはずだ」と。じゃあ、何がダメだったのか……そういったことをすべて文章に書きだして、今も反省ノートみたいな物が家にありますよ。