
かつて川田将雅も「嫉妬」した“天才”が挑む勝負の2週間…数字に表れる意識の変化、覚醒を予感させる中堅に「再ブレイク」の予感

5月も折り返し地点を過ぎ、春のG1戦線もいよいよ終盤戦に突入。今週末は牝馬三冠の2戦目となるオークス(G1)が、そして来週は2020年産まれのサラブレッドの頂点を決する日本ダービー(G1)が東京競馬場で行われる。
3歳の若駒たちにとって、過酷な府中の芝2400mという条件での大一番だけに、馬の能力や資質はもちろんのこと、手綱を握る騎手のエスコートも大きなポイントとなる。そこで波乱の使者として期待したいのが、今季好調ぶりが目立っている津村明秀騎手だ。
デビュー20年目のベテランは、ここまで23勝を挙げて全国リーディング16位にランクイン。関東リーディングでは6番手と好位置につけるなど、順調なペースで白星を積み上げてきた。
津村騎手といえば、関東の中堅という印象が強いものの、今年はこれまでとは一味も二味も違う勝率・連対率・複勝率をマーク。失礼かもしれないが、これまでと別人のような騎乗ぶりが目に付く状態だ。中でも特に目を引くのが勝率の高さ。以前の津村騎手には、どことなく勝負に徹しきれない詰めの甘さのようなものを感じることも多かったが、最近の津村騎手はとにかく勝負強いのが特徴である。
これらは実際の数字を見てみても確認が可能だ。昨年は1着数と2着数が同じ38で、それまでも2着の数が1着を上回るシーズンが4年続いていた。ところが今年はまだ前半戦とはいえ、【23-20-23-174/240】となっており、しっかりと勝ち切るケースが増えてきた。勝率も2017年に記録した8.1%が自己最高なのに対し、今年は既に9.6%を叩き出しているのだ。
ただ、元々の津村騎手に対する評価の高さを思えば、それでも物足りなさを感じるくらいではないだろうか。
今年でデビュー20年目を迎えた津村騎手だが、同期に昨年のリーディングジョッキー・川田将雅騎手、ほかにも吉田隼人騎手や藤岡佑介騎手、丹内祐次騎手などがいる世代。そんな有力騎手が集うJRA競馬学校・騎手課程第20期生の中で、当時ズバ抜けた存在だったのが他でもない津村騎手だったという。
『netkeiba.com』で連載中の藤岡佑騎手の対談企画「with佑」でも、同期の騎手と競馬学校時代を振り返る際には決まって津村騎手の名前が挙がり、今や日本の頂点に君臨する川田騎手にも「津村には一度も勝てなかった」と言わしめたほどの“天才”だった。
藤岡佑騎手も「打倒・津村の世代」と振り返ったように、デビューに向けて行われる模擬レースでも2戦2勝と他を圧倒。成績優秀者に贈られる『アイルランド大使特別賞』も文句なしで受賞して、鳴り物入りでデビューを迎えた。
しかし、デビュー初年度は8勝を挙げて『民放競馬記者クラブ賞』も受賞したものの、以降は思うように成績を伸ばすことができなかった。JRAの通算勝利数を見ても、川田騎手が1886勝で吉田隼騎手も1150勝、藤岡佑騎手も975勝で大台が迫る中、津村騎手は今年5月に20年かけて通算600勝に到達したところだ。
加えて、その間に川田騎手はJRAのG1競走で計22勝を挙げ、吉田隼騎手も藤岡佑騎手もG1での勝利を掴んでいるが、津村騎手はG1どころかG2での勝利もない。通算600勝達成時のインタビューでも、「誰よりも僕自身がビッグレースで活躍できるようにとは思っていますが、コツコツ勝っていけば道が開けると思っているので引き続き頑張っていきたいです」と語ったように、好調な今こそ大舞台での勝ち星を掴みたいところだ。
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