武豊「力を出せなかった」ジャックドール完敗…プログノーシス圧勝も川田将雅はトーン控えめ、関係者が口を揃えた札幌記念の違和感
ジャックドール、シャフリヤール、ウインマリリンといったG1馬3頭をはじめ、G1級の呼び声が高い重賞勝ち馬が一堂に会した今年の札幌記念(G2)は、スーパーG2の評価に違わない熱戦が繰り広げられた。
今夏最大の注目を集めた一戦を制したのは、2着馬に4馬身差をつけて圧勝したプログノーシス(牡5、栗東・中内田充正厩舎)だった。
他の騎手が手綱を取ったレースで惜敗の続いたパートナーを勝利へ導いたのは、やはり川田将雅騎手だ。
昨年のリーディングジョッキーによる道中の冷静な手綱捌きが冴えに冴えた。コンビ6戦目となった札幌記念を含め、川田騎手が手綱を取った際は全勝。今回以上の強敵が待つ秋のG1戦線も川田騎手とのコンビなら無敗が続いても不思議ではないと思えるだけの圧勝で締めくくった。
プログノーシス圧勝も川田将雅はトーン控えめ…
「こういう特殊な馬場にもなっているので、適性の差も出たのかなとは思います」
会心の騎乗をそう振り返った川田騎手だが、これほどライバルを圧倒した割には控えめなコメントに感じる。「特殊な馬場」「適性の差」という気になるワードも少々引っ掛かった。
ただ、敗れた馬に騎乗していたライバルも、4着ダノンベルーガのJ.モレイラ騎手が「もっといい馬場の方が力を出せる」、5着ヒシイグアスの浜中俊騎手が「返し馬でもノメっていました」、9着ウインマリリンの松岡正海騎手が「良馬場の方が合っています」と、馬場状態についてコメント。後にエントラップメントの発症が判明し、後日手術を受けると発表されたシャフリヤールも横山武史騎手から「馬場が悪いのは無理でした」という言葉が出ていたほどである。
そういう意味では、札幌記念の結果を鵜呑みにしては危ういということかもしれない。
「力を出せなかった」ジャックドール完敗…
また、昨年との連覇を狙ったジャックドール(牡5、栗東・藤岡健一厩舎)も「特殊な馬場」に泣いた可能性が考えられる。
本馬を4月の大阪杯(G1)で初G1制覇に導いた武豊騎手もレース後に「今日は力を出せなかった感じです」とコメント。レジェンドが「状態は良いと思いましたし、展開もある程度読める流れ」だったなら、ここまで大きく負けたことには違和感が残った。
「土曜札幌は良馬場でしたが日曜は稍重での開催。水捌けのいい東京や京都なら、そこまで渋らなかったと思いますが、札幌は雨の影響が残ってしまったようです。全体的な時計でも、ひとつふたつ掛かった印象です。
レースについても前後半の5Fが60秒4-61秒1の前傾ラップ。先手を争ったユニコーンライオンとアフリカンゴールドが飛ばす展開を、早めに捕まえにいった組が伸び切れなかった理由でもあるでしょう」(競馬記者)
記者の話す通り、札幌記念の勝ちタイム2分1秒5は、良馬場で行われていた土曜10R富良野特別(1勝クラス)の2分1秒8と0秒3の差でしかない。しかもこれは独走を決めたプログノーシスのタイムとの比較であり、2着に入ったトップナイフが2分2秒2だったため、1勝クラスのレースから0秒4も後れを取っていたことも浮き彫りとなる。
そう考えると乗っている騎手からすれば、発表こそ稍重でも体感的には重や不良のような感覚に陥ったのではないか。元JRA騎手の安藤勝己氏もSNSでジャックドールについて「敗因は完全に重い馬場やね」と分析していたように、この「特殊な馬場」で本来の力を発揮できずに敗れた馬が多かったのではないか。
とはいえ、川田騎手から「適性の差が出た」と評されたプログノーシスが、圧倒的な走りでライバルを凌駕したことは紛れもない事実。血統的にも本馬は軽くて時計の出る馬場に適性のあるディープインパクトの産駒だ。
父のイメージ的に馬場が向いたという理由だけで、これほどのパフォーマンスを演じたと論ずるにはまだ早い。これがただのフロックだったのか、それとも実質G1級の走りだったのかの答えが出るのは、秋に控える大一番で真価を問われるだろう。
不完全燃焼で敗れたライバルたちの巻き返しにも注目したい。
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