JRAエルフィンS「高配当」の使者を発見!? 「隠れ良血」デアリングタクトは祖母・母の無念を晴らせるか
8日(土)に京都競馬場でエルフィンS(L)が行われる。かつてはウオッカ、エアメサイア、マルセリーナなど後のG1馬を多数輩出した出世レースの一つとしても知られる。
しかし、ここ数年エルフィンS優勝馬は牝馬クラシック戦線で苦戦中だ。2011年にマルセリーナが桜花賞を制覇して以降は、15年にクルミナルが桜花賞で2着に入った程度で、それ以外の勝ち馬は本番でことごとく着外に沈んでいる。
今年のエルフィンSで人気を集めそうなのがファーストフォリオ。1戦1勝の身ながら、父キングカメハメハ、母シーザリオ、兄にサートゥルナーリア、エピファネイア、リオンディーズを持つ超良血馬だ。血統背景は世代でも屈指の存在といえるだろう。
そのファーストフォリオと幾つかの「共通点」を持つ馬がいる。同じ1戦1勝で、血統表にキングカメハメハとシーザリオの名前があるデアリングタクト(牝3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)である。
デアリングタクトの父はエピファネイアなので、父の母がシーザリオ、そして母の父がキングカメハメハという血統。その上で注目したいのが、母の母デアリングハートの存在だ。
2002年生まれのデアリングハートは、シーザリオと同世代だった。ともに05年春の牝馬クラシック戦線を賑わせている。デアリングハートはその年のエルフィンSにも出走し、6着に敗れたが、10番人気で挑んだ桜花賞(G1)で3着に好走。優勝したラインクラフト、2着のシーザリオとゴール前大接戦を演じた。
その後はNHKマイルカップ(G1)に向かうと、ここでも10番人気ながらラインクラフトの2着に食い込み、波乱を演出した。古馬になって重賞を3勝。G1でも2着1回、3着2回と好走したが、結局G1制覇はならず。引退後は生まれ故郷の社台ファームで繁殖入りした。
シーザリオほどの存在感はなかったが、6歳の2月まで走り抜き、最終的に稼いだ賞金はこの世代の牝馬で4位という息の長い活躍を見せた。
そして2011年にデアリングハートの初仔として生まれたのが後に、デアリングタクトの母となるデアリングバードだった。
デアリングバードは母の現役時代の実績から競走馬として将来を嘱望されたが、デビューは遅れに遅れて3歳夏の中京未勝利戦。そこで9着に敗れると、1走しただけで翌年から繁殖入り。そして2017年にデアリングバードの2番仔として誕生したのがデアリングタクトである。
デアリングタクトは昨年11月、今回と同じ京都芝1600m(内回り)でデビュー戦を迎えた。道中スローペースだったこともあり、勝ちタイムこそ平凡だったが、直線で見せた一瞬の切れ味は素質を感じさせるに十分。2着に1馬身半差をつけたが、着差以上の強い内容だった。
今回は内回りから外回りに変わるが、前走の直線の脚を見る限り外回りは、むしろ歓迎材料と言えるだろう。好調の松山弘平騎手が引き続き騎乗するのも心強い。
前走から約2か月半とやや間隔は空いたが、1月中旬に栗東トレセンに入厩後は、坂路を中心にしっかり乗り込まれてきた。今週水曜日には坂路で自己ベストを大幅に更新する好タイムを計時し、状態は上向きだ。
人気面では超良血のファーストフォリオに譲るが、馬券的には“隠れた良血”デアリングタクトの方に妙味がある。わずか1戦で引退した母、そしてG1制覇を果たせなかった祖母の無念を晴らすべく、デアリングタクトは牝馬クラシック戦線に名乗りを挙げられるだろうか。