JRA「凋落」関東ジョッキー、横山武史はレアケース。 あの2世騎手が関西を選んだ理由は父の「進言」にあり
競馬界の「西高東低」は令和の時代も続いている。もしかすると未来永劫続くのかもしれない……。
関西馬が関東馬の年間勝利数を初めて上回った1988年以降、この傾向は依然として続いている。実際に、19年も関東馬が1474勝に対して、関西馬は1983勝と大きく上回る結果だった。
この傾向が生まれるきっかけとなったのは、栗東に坂路コースが開設されるなど施設が改善されたことが大きいと言われている。その後、美浦にも坂路コースができるなど施設改修が行われたことで、差は埋まりつつある。先週のユニコーンS(G3)で圧巻の走りを見せたカフェファラオやアーモンドアイも関東馬であるように、関西に一矢報いている印象だ。
だが、それでも勝ち星の差を見ると、まだまだ格差の是正には至っていないようだ。
これは騎手においても同じで、現在の全国リーディングトップは栗東所属のC.ルメール騎手で92勝。それに続いて、川田将雅騎手、武豊騎手、松山弘平騎手……と8位までが関西ジョッキーで埋め尽くされているのだ。
ようやく9位に吉田隼人騎手が関東トップの38勝で食い込んでいる。勝ち星の差は厩舎の東西格差をはるかに超えるもので、この傾向はベテランジョッキーに限ったものではなく、若手騎手にも言えることだ。
関西ではデビュー2年目の岩田望来騎手が41勝を挙げ、全国リーディング6位の大活躍。ほかにも団野大成騎手が35勝、西村淳也騎手が31勝など今後の競馬界を背負うホープの活躍が目覚ましい。その一方で、関東は34勝の横山武史騎手が気を吐いているだけで、それ以外の上位はすべて中堅、ベテラン、外国人騎手で埋め尽くされている状況。
この背景には競走馬だけでなく、騎手の育成環境も影響しているようだ。
「現在大活躍している関東の横山武騎手はレアケースです。関西の厩舎からも騎乗依頼があるのは父の影響もありますが、本人の社交的で明るい性格や積極的な競馬で光るモノがあってのことでしょう。
一方で、関東には新人を育てるノウハウや余裕がないのが現状です。実際に、斎藤新騎手が関西に所属した理由というのが、美浦所属の調教師である父から『関東の厩舎より関西のほうが育てる意識が高く、いい馬も多く、減量騎手も積極的に使ってくれる』と進言されたことがきっかけのようです。それで結果を残していますし、関西の新人ジョッキーが総じて乗れていることが、それを証明していますね」(競馬記者)
この育成環境が続くと、「騎手の質がいい栗東にいい馬が集まる→関東馬、関東騎手が勝てない」という悪循環が続いてしまい、西高東低から脱却することが厳しく思えてしまう。
競走馬の育成がトレセンの仕事だが、人材教育も重要な責務である。いつか厩舎、騎手ともに東西拮抗する時代が来ること願いたい。