世界を股にかけ「訳アリ商品」で数100億円を荒稼ぎ。イギリスに「国家的な損失」を与えた買い物上手な日本人たちとは
ディープインパクトやオルフェーヴル、ゴールドシップでも勝てない凱旋門賞を圧勝したダンシングブレーヴは、当時の最高評価を受けました。
あまりにも図抜けたパフォーマンスで、引退する前から種牡馬として33億円の価値がつくなど、大人気だったダンシングブレーヴ。
しかし、引退した直後にマリー病という奇病に感染してしまいます。マリー病は結核の一種で、なんとか一命を取り止めたダンシングブレーヴでしたが、肝心の子供たちがまったく走りません。
いくら世紀の名馬でも、結核にかかり子供も走らないのでは、見切られるのも当然かもしれません。当時33億円だったダンシングブレーヴの評価はどんどん下落し、最終的には「訳アリ商品」として日本に売却されることとなりました。
その購入金額が約8億円。つまり33億円から「76%オフ」だったということですね。
しかし、日本に売却してからわずか2年後、ダンシングブレーヴが欧州に残していった数少ない子供たちが大活躍。挙句には自国イギリスのダービーも勝たれてしまいます。当時のイギリスのメディアはこの事態を受け「国家的な損失」と報道したそうです。
もちろん、ほくそ笑んだのは日本の競馬関係者です。日本に渡ったダンシングブレーヴは、その期待に応えるように次々と名馬を輩出。最期まで持病に苦しめられましたが、日本の競馬史に確かな足跡を残しました。いやー、ほんと買い物上手だなあ。
一方で、日本はアメリカからも「訳アリ商品」の購入で大成功しています。その「訳アリ商品」とは、ディープインパクトの父として有名なサンデーサイレンスです。
1989年の米国年度代表馬になったサンデーサイレンス。しかし、その地味な血筋と見てくれの悪い馬体から、種牡馬になったものの申し込みはわずか2件……。そんな時に「売ってくれ」と手を挙げたのが、日本の長者番付でも有名な社台グループの創設者の方です。
本来なら、自国の年度代表馬を売るはずもなかったのですが、当時のアメリカはサンデーサイレンスをまったく評価しておらず、あっさりと叩き売り。それも「日本人が16億円で、とても成功しそうにない馬を買っていった」と笑い者にしていたそうです。
その後、日本に渡ったサンデーサイレンスの活躍は語るまでもありません。ディープインパクトを始めとした数多くの名馬を送り出し、日本競馬の発展に一役買ったほどの成功を収めました。
最盛期2500万円の種付け料を誇ったサンデーサイレンスが、日本で稼いだお金は数100億円といわれています。
もともと商売上手なイメージが強い日本ですが、本当に買い物上手な方々がいらっしゃいますね。毎日100円、200円の違いで唸っている私も少しは見習いたいものです。それにしても、この牛肉の霜降りは買った方がいいんだろうか……。
(文=藤田ハチ子)