JRA武豊に憧れ競馬界へ――山田敬士「福島競馬」で大爆発!! 「苦難」を乗り越え掴んだ自身初の3連勝!
31日、福島競馬6Rでアースライザー(セ3歳、栗東・宮徹厩舎)が勝利し、山田敬士騎手が騎乗機会3連勝を飾った。
2018年の3月にデビューした山田騎手。今年の2月22日に1日2勝ということはあったが、連勝も含め1日3勝はこれが初めての記録となった。今年もここまでわずか14勝と、決して馬質に恵まれているとはいえない中での勝利は、これまでの努力が実を結んだといえるだろう。
しかも、驚くのはその人気。2Rで騎乗したインペリアルツアーは、単勝34.2倍の5番人気、3Rで騎乗したマハーラーニーは、単勝31.6倍の9番人気。3連勝目となった6Rのアースライザーが単勝8.6倍の5番人気だった。
ただ、山田騎手がデビューしてからの約2年半は、平坦な道のりではなかった。
約2年前の2018年。10月13日、新潟6Rで起きた「距離錯誤」だ。本人も決して忘れることのない「出来事」だろう。「ダート2500m戦で、バレットの人と『珍しい距離ですね』って話をしていたんです」と、競馬ライター・平松さとし氏の取材で語った山田騎手。そのレースで騎乗したのはペイシャエリートという馬だった。
ペイシャエリートがこれまでのレースで好走したのは逃げた時のみ。本馬を管理する小笠倫弘調教師からも「とにかく逃げて」といわれていたという。
レースではスムーズにハナを奪ったペイシャエリート。しかし、それで気が緩んだ山田騎手は、2週あるレースの1週目をゴールと勘違いする。ゴール板を過ぎ「勝った!」と思ったのも束の間、柴山雄一騎手の「もう1周!」という言葉に愕然としたそうだ。
そんな中で、騎手を続けてこられたのも、山田騎手が周りの人間に恵まれていたからだろう。
小笠調教師には「僕がとにかく逃げてって強調しちゃったから、申し訳なかった」と言葉をかけられ、丸田恭介騎手にも「これで終わりじゃないから」と励まされた。
その後、師匠の小桧山悟調教師と謝りに行ったペイシャエリートのオーナーの北所直人氏も寛大であった。「これからもまた乗せるから、頑張れ」と声をかけられ、山田騎手は溢れそうになる涙を必死に堪えたという。
山田騎手が、騎手を目指したきっかけを「たまたま見たテレビでディープインパクトの特集をしていました。気になってその後の有馬記念を見たら乗っていた武豊さんが格好良くて、憧れるようになりました」と、同記事で語っている。
憧れの武豊騎手は今も現役。一線級で活躍していることも、山田騎手のモチベーションに繋がっているのではないだろうか。
今回の3連勝で再び話題を集めそうな山田騎手。中山馬主協会のWebサイトで連載中の『キャプテン渡辺のウィナーズサークル』でインタビューを受けた際には「そう(スター騎手に)なれるようがんばります!」と回答した。
競馬界のスターといえば武豊騎手。まだまだ遠い背中だが、今回の記録でまた一歩「憧れの存在」に近づいたことは間違いないだろう。