JRA武豊「ぼくには無理」名手ですら諦めたあの暴走劇から17年! 阪神JF(G1)メイケイエール試練の大外枠…… 「G1・24連敗」の屈辱を晴らせるか
13日、阪神競馬場では2歳女王の決定戦となる阪神JF(G1)が開催される。勝てば来春の桜花賞(G1)で最有力候補となるマイルG1に今年も楽しみなメンバーが揃った。
レベルの高さの証明となるのは無敗馬の多さだろう。重賞2勝を含む3連勝で挑むソダシとメイケイエール、その他にもサトノフラッグの妹サトノレイナス、ききょうS(OP)をレコード勝ちしたポールネイロン、昨年のクラシックで活躍したシゲルピンダイヤの妹シゲルピンクルビーと5頭が出走を予定している。
中でもソダシと同じくシラユキヒメから始まる白毛一族の鹿毛・メイケイエール(牝2、栗東・武英智厩舎)は注目の1頭だ。8月に小倉の新馬戦を福永祐一騎手の手綱で勝ち上がると、2戦目からは武豊騎手にバトンタッチ。初コンビの小倉2歳S(G3)を快勝すると、ファンタジーS(G3)も連勝し、G1の舞台に駒を進めて来た。
当然ながら阪神JFでも有力馬の1頭として期待されるのだが、最大の懸念材料となるのはその前のめり過ぎる気性である。特に顕著だったのが前走のファンタジーSだ。スタートで後手に回りながらも外からグングンと加速し、折り合いに定評のある武豊騎手を以てしても制御不能な状態に近い暴走。にもかかわらず、直線先頭に立つと最後までそのまま押し切ってしまった。
逃げ先行勢が沈み、2着に入ったオパールムーンが直線最後方から追い上げたことを考えれば、いかに強引なレースで勝利したかもうかがい知れる内容だったといえる。
それまで2戦した1200mから1ハロン延びた1400mでこれでは、さらに1ハロンの距離延長となるマイルG1に対応できるのかどうかは疑わしいと感じる勝ち方だったかもしれない。
前走は外枠から押さえ切れなかっただけに、できれば前に壁を作れる真ん中より内の枠が欲しいところだったが、よりによって8枠18番というメイケイエール陣営には試練と思える大外枠が当たってしまった。
ところが、大外を残念がっていると思いきや、陣営は意外にもこれを喜んでいたようだ。『スポーツ報知』によると、武英智調教師は「スタートがそれほど速くないので、前にたくさん馬がいると不安だった。内枠でケンカする形になるのが嫌だった」と好感触。「この枠ならジョッキー心理として乗りやすい。一気に前が開けた」とむしろ大歓迎といわんばかりのコメントを残している。
しかし、やはり気になるのはファンタジーS後に武豊騎手が残したコメントだ。同騎手は「今日もだいぶ引っ掛かったというか、馬が前半から力んで夢中になって走っていました。前半あれだけロスがあって厳しいかと思いましたが、最後まで持つのはすごい」と能力を評価しつつも、距離については「折り合いひとつですね。前半ゆっくり走れれば、1600メートルまで大丈夫です。今のままだとこれ以上延びるのは厳しい。能力は高いけど、明確な課題はある。そこだけですね」と半信半疑といえるニュアンスだった。
「大外枠は正直厳しいと思いますよ。前走も殆んど制御不能でしたから……。今回はマイルの上にG1で相手も強化されています。同じようなレースをしてしまうと勝ち目はありません。
武豊騎手がいうように折り合いひとつには違いありませんが、そのためには内枠が欲しかったでしょう。陣営は騎手がどう乗るか楽しみなんて言っていましたが、これはハードルが高そうです」(競馬記者)
武豊騎手が騎乗馬の暴走を押さえ切れなかったレースといえば、思い出されるのは2003年の京成杯(G3)だ。圧倒的1番人気に支持された前走のラジオたんぱ杯2歳S(G3・当時)で内へ刺さって7着に敗れていたブルーイレヴン。再び断然人気を背負ったこのレースで2コーナー前から制御が利かなかった。まさかの大逃げとなってしまった結果、直線で失速して11着に惨敗した。