「組織力にやられた」武豊が潰された有馬記念。安藤勝己氏も指摘した「影の主役」と、日本競馬に馴染みのない文化に賛否両論
「組織力にやられた……」
2016年の有馬記念(G1)のレース後、最後の最後にサトノダイヤモンドに先頭を譲ったキタサンブラックの武豊騎手は悔しそうに、そうつぶやいたという。
最後はクビ差と本当に紙一重の勝負。だが、両雄の明暗を分けたのは馬”個々の力”ではなかったようだ。
「2番手からは想定通り。最後もいいタイミングで差し返せたかと思ったのですが。3コーナーでサトノノブレスにつつかれたのが痛かった」(武豊騎手)
レースは逃げ宣言をしていたマルターズアポジーが飛ばす展開で、キタサンブラックは2番手をキープしていた。1000通過は61秒と遅いペース。ここまでは武豊騎手とキタサンブラックにとって、理想的な流れだったといえるだろう。
だが、そこからレースの流れは一変する。向正面で残り1000m辺りから、サトノノブレスが早めの進出を開始したからだ。キタサンブラックに並び掛けようとしたところで、レースは一気にペースアップした。
結果的に、キタサンブラックはこの早すぎたペースアップが堪えて、最後の最後でサトノダイヤモンドに差し切りを許した。武豊騎手が「サトノノブレスにつつかれたのが痛かった」と話したのは、つまりそういうことだ。
ただ、その一方でこの流れを生みだしたサトノノブレスは、早々に手応えが怪しくなって13着に沈んでいる。やはり強引なレース運びに無理があったようだ。1年の総決算となる有馬記念、13番人気の穴馬だった本馬からすれば”一発”を狙いに行った騎乗だったのだろうか。
このサトノノブレスの奇襲で、最も得をしたのは間違いなく勝ったサトノダイヤモンドになる。着差はクビ差。武豊騎手の言葉は裏を返せば、あの奇襲がなければ勝負はわからなかったということだ。
サトノノブレスは、サトノダイヤモンドと同じ里見治オーナーの所有馬。さらに2頭とも池江泰寿厩舎に所属し、鞍上もV.シュミノーとC.ルメールで同じフランス人同士となる。武豊騎手が「組織力」という言葉を用いたように、そこに事前の”何か”があったことを想像するのは決して難しい話ではない。
これに反応したのが、元騎手で現在は競馬評論家をしている安藤勝己氏だ。