JRAグラスワンダー以来の特別賞……。春秋グランプリ制覇クロノジェネシスが“無冠回避”も、「21年前」とは大きな変化が!?
6日、JRAは「2020年度JRA賞競走馬部門」の受賞馬を発表した。
年度代表馬はG1・3勝を挙げ、史上初となる芝G1・9勝を達成したアーモンドアイが受賞。安田記念(G1)でアーモンドアイを破り、G1・3勝を挙げたグランアレグリアは最優秀短距離馬に輝いた。
昨年の競馬界はまさに牝馬が大活躍した1年だった。古馬芝G1は天皇賞・春を除いて、すべて牝馬が優勝。牡馬として唯一のタイトルを守ったフィエールマンが最優秀4歳以上牡馬に輝いたことからも、牝馬は非常にハイレベルな争いとなった。
それを象徴するのが特別賞を受賞したクロノジェネシス(牝5歳、栗東・斉藤崇史厩舎)だ。
特別賞とは特別に表彰すべき対象がある場合に臨時に設けられるもので、2016年に受賞したモーリス以来4年ぶりの受賞である。
この年はキタサンブラックが年度代表馬と最優秀4歳以上牡馬を受賞したものの、モーリスも海外G1・2勝、天皇賞・秋の優勝が評価されて特別賞となった。これ以前には8歳馬として史上初の平地競走G1を勝ったカンパニー、日本産馬初の海外G1を制したステイゴールドなども受賞している。
大活躍したがJRA賞の受賞に至らなかった馬、もしくは歴史的な記録を達成した馬に与えられるのが特別賞というわけだ。
昨年のクロノジェネシスは5戦3勝という成績で、春秋グランプリ制覇を達成。敗れたレースも大阪杯(G1)の2着、天皇賞・秋(G1)の3着と、安定した走りだった。
しかし、今年の牝馬はアーモンドアイ、グランアレグリアがそれぞれG1・3勝を挙げる大活躍ということで、最優秀4歳以上牝馬の投票ではクロノジェネシスに1票も入らないという事態が発生。だが、春秋グランプリ制覇という点が評価されて特別賞が与えられることになった。
これまでに同一年の春秋グランプリ制覇(グレード制導入後)を達成した馬は以下の通りである。
1989年 イナリワン
1992年 メジロパーマー
1999年 グラスワンダー
2000年 テイエムオペラオー
2006年 ディープインパクト
2009年 ドリームジャーニー
2019年 リスグラシュー
ほとんどの馬が年度代表馬に輝いており、落選したドリームジャーニーも最優秀4歳以上牡馬を受賞している。この中で唯一、特別賞を受賞したのがグラスワンダーだった。
この年、5戦4勝で春秋グランプリ制覇を達成したグラスワンダー。年度代表馬を受賞してもおかしくない成績である。しかし、年度代表馬と最優秀4歳以上牡馬を受賞したのは、年間一度も日本で走っていないエルコンドルパサーだった。
前年にフランスのジャック・ル・ マロワ賞(G1)を制したタイキシャトルが年度代表馬に選出された流れもあり、日本馬初となる凱旋門賞(G1)で2着という大健闘が票を集めたのだった。
ちなみに、この年は天皇賞の春秋制覇を達成したスペシャルウィークも特別賞を受賞。4歳牡馬が競馬界を盛り上げた1年であったことがよくわかる。
あれから21年、クロノジェネシスの特別賞受賞は対照的に「牝馬時代」を象徴するものとなったようだ。