武豊騎手「衰えゆく競馬の象徴」を競馬界はどう活かすのか。2016年はその「モデルケース」となった一年 ~2016年競馬界プレイバック2~
エイシンヒカリと共に参戦したフランスのイスパーン賞で10馬身差の圧勝。全世界に衝撃をもたらし、英レーシングポスト紙が「131」という世界一の評価を与えたのだ。
結局、上半期で武豊騎手が勝ったJRAの重賞は先述したAJCCと、アウォーディーによるアンタレスS、キタサンブラックとの天皇賞・春だけだったが、そんなことをまったく感じさせない存在感。日本の競馬は、武豊騎手を中心に回る”本来の姿”を取り戻していた。
さらに海外遠征もひと段落した夏辺りから注目され始めたのが、武豊騎手の交流重賞での活躍だ。
海外と同じく地方競馬との交流重賞にも積極的に足を運ぶ武豊騎手は、そこで11月の兵庫ジュニアグランプリで6着に敗れるまで、すべて馬券圏内を確保。今年ここまで[9.2.1.1]と神懸った成績を収め、まさに”無双状態”だった。
これにより5月の天皇賞・春以降、次に武豊騎手がJRAの重賞を勝つのは10月の京都大賞典になるのだが、地方で華々しく重賞を勝ちまくっていたおかげで、JRAの重賞を勝てていなかった印象はほぼなかったというわけだ。
その後もヌーヴォレコルトと共に11月に開催されたアメリカのブリーダーズCに参戦、12月にも香港Cをエイシンヒカリで、香港ヴァーズをスマートレイアーでそれぞれ参戦するも目立った結果は残せず。
ただし、その間にキタサンブラックでジャパンCを勝ち、ダート路線でもアウォーディーと新時代を築くなど、国内で存在感を発揮した武豊騎手。好転した歯車は噛み合い続け、有馬記念でキタサンブラック、東京大賞典でアウォーディーと、どちらも1番人気が濃厚な最高の形で年末を迎えようとしている。
ただ、同時に言えることは”その形”ができている時点で「武豊効果」によって有馬記念も東京大賞典も世間から例年以上に大きく注目されることが半ば決まっており、売り上げを重視する競馬界としては、それこそが「従来の成功の形」といえるのだ。
こうして2016年の競馬界は「大成功」のまま、幕を閉じようとしている。