【特別連載③】JRAではあり得ない不正の温床に……「調整ルームなし、携帯OK」騎手、調教師らが「馬券で2億円」勝ててしまった笠松競馬の闇
地方競馬では不祥事が頻発している。ホッカイドウ競馬でも昨年5月、厩務員が馬券を購入し、年末には罰金20万円の略式命令が出されている。今月5日になって雇用していた調教師の指導監督責任が不十分だったとして、4月14日から6月10日まで賞典停止(賞金配分の停止)と厩務員の資格剥奪、2年間の競馬関与停止の処分を発表した。
また、岩手県競馬組合傘下の盛岡、水沢競馬場では一昨年から禁止薬物事件が続発。このため開催中止を余儀なくされた。
こうした事件の背後には、笠松競馬と同じく競馬“エッセンシャルワーカー”の貧困があろうことは想像に難くない。馬券購入はもちろん競馬法で禁止されている。”エッセンシャルワーカー“が馬券を購入して的中させれば、本来は的中した競馬ファンの配当額を押し下げてしまう。
これとて競馬ファンへの背信行為であるが、それよりも重大なのは競馬関係者のだれもが口にしたくない、そして口を閉ざす八百長である。
競馬関係者の馬券購入、禁止薬物事件とくれば、その次に想像されるのは八百長だろう。既に一部の競馬場では八百長が行われているのではないか、と一部の競馬ファンがサイトを開設。真偽はさておき、そこには様々な情報が寄せられている。
ただ、その一方で各主催者、地方競馬全国協会が不正根絶に向けた貧困撲滅対策に着手したという報道は寡聞にして知らない。すべてがそうとは断言しないが、多くの不正は結局のところ、不正を働いた者が生活や経済面で追い込まれた末に行ってしまったものだ。
貧困を放置すれば、競馬社会が最も警戒し予防しなければならない八百長ですら、今後起きてしまうのではないか、と危惧せざるを得ない。多くの競馬ファンが感じているように、それは発覚していないだけなのではないか、と危惧は更に深まる。(続)
<プロフィル>
売文家・甘粕 代三(あまかす・だいぞう):1960年東京生まれ。早大在学中に中国政府給費留学生として2年間中国留学。卒業後、新聞、民放台北支局長などをへて現業。時事評論、競馬評論を日本だけでなく、中国・台湾・香港などでも展開中。