JRA「破天荒な天才」メイショウテンゲン復活の条件整った!? 激走トリガー握る酒井学と共同戦線、あの日あの時あのキャリー
21日、阪神競馬場で行われる阪神大賞典(G2)にメイショウテンゲン(牡5、栗東・池添兼雄厩舎)が酒井学騎手とのコンビで出走を予定している。
ひと頃の勢いは完全に影を潜め、近3走の成績はアルゼンチン共和国杯(G2)が3.8秒差ブービー負け、ステイヤーズS(G2)が3.8秒差ブービー負け、ダイヤモンドS(G3)は4.8秒差シンガリ負けと、目も当てられない惨敗を積み重ねているのが偽りのない現状である。
なお、「ひと頃の勢い」があった同時期の成績は菊花賞(G1)が1.7秒差12着、ステイヤーズS(G2)が0.4秒差4着、ダイヤモンドS(G3)に至ってはタイム差なしの2着で、実に3着以下には5馬身差を付けていた。
ステイヤーとして花開くかに思われた昨年春の走りから、これだけ僅かな期間で競争能力が落ちるものだろうか?おそらく答えはNOだ。そもそもメイショウテンゲンは父ディープインパクト、母メイショウベルーガという良血馬であり、坊ちゃん特有の自由気ままな面がある。
思えば初勝利となった4戦目の2歳未勝利戦(阪神・芝1800m)では定番の出遅れから始まり、最後の直線で馬場のド真ん中を突き抜けるだけのところから、わざわざ逸走まがいの大外一気に変更しての豪快な勝ちっぷり。まさに「遊びながら勝った」と言える内容である。
「破天荒な天才」はこうして初白星を挙げたのだがデビュー戦は、後に菊花賞(G1)を勝ち、有馬記念(G1)でも3着したワールドプレミアの2着、2戦目は5連勝でチャレンジⅭ(G3)を制したロードマイウェイの2着、3戦目は「ブエナビスタの娘」で現OPのタンタラスが勝ち馬だった事を考えれば「今日は遊んでても勝てる」とメイショウテンゲンは理解していたのかもしれない。同じ芦毛馬の「破天荒娘」リフレイム同様、個性的な馬にコアなファンがつくことも珍しくない。
そのようなファンへ贈り物をしようとメイショウテンゲンが当時考えていたかは不明だが、2019年の弥生賞(G2)で彼は大仕事をやってのける。当日のWIN5は弥生賞直前までの4戦で勝ち馬の人気が順に7、14、5、13と荒れに荒れて残存は僅か7票。
大金ゲットをリーチで待ち望んだファンを嘲笑うかのようにメイショウテンゲンは激走した。「少数の億り人」を出す事よりも、翌週のキャリーオーバーを祈る「多くのファン」の期待に応えたのだ。
奇しくも今回初コンビの酒井学騎手は弥生賞当日の大阪城S(OP)を13番人気のスピリッツミノルで制し、メイショウテンゲンにバトンを渡した張本人である。つまり既にこのコンビで一度大仕事を成し遂げているのだ。
あの日以降、メイショウテンゲンは勝利から遠ざかっていることもあり、巷では「終わった」という声もチラホラ聞こえる。だが、G2を勝ち切る素質と爆発力を兼ね備えた馬である事は既に証明されている。
メイショウテンゲンと酒井学騎手の間で「次は同じ場所で」そんな密約が結ばれているということはないだろうが、週末の阪神競馬場は彼らにとって穴を出すには「最高の舞台」になりそうだ。