JRA【阪神大賞典(G2)回顧】「5馬身」圧勝ディープボンドが大本命アリストテレスを撃破! 父キズナが果たせなかった悲願に大きな前進
21日、阪神競馬場では1着馬に天皇賞・春への優先出走権が与えられる阪神大賞典(G2)が開催された。京都競馬場の改修工事の影響で今年の天皇賞・春は阪神競馬場で行われることも相まって、例年以上にレースの結果が本番へ直結すると考えられていた重要な一戦である。
注目を集めたのは単勝1.3倍の圧倒的1番人気に推されたアリストテレス。昨年の菊花賞(G1)では三冠馬コントレイルの2着、今年の始動戦となった1月のAJCC(G2)を制した。2番人気に昨年の阪神大賞典を制しているユーキャンスマイル。3番人気は年明けの中山金杯(G3)では14着に敗れたが、菊花賞4着を評価されたディープボンドだった。
前日から降り続いていた雨の影響で当日は重馬場。ユーキャンスマイルに騎乗予定だった武豊騎手が、前日の負傷により藤岡佑介騎手に乗り替わるなど、一波乱ありそうな雰囲気を醸しながらレースは始まった。
注目の結果はディープボンドが後続に5馬身差をつけての快勝。2着にユーキャンスマイル、3着には9番人気のナムラドノヴァンが入った。大方の予想を覆してアリストテレスは馬券圏外の7着に終わった。
賞賛すべきはやはりディープボンドだ。これまでに長距離の経験は4着に入った菊花賞の1走のみで、同レース2着のアリストテレスに3馬身半以上も差をつけられていた。ディープボンドは最終コーナーでは3番手につけたまま直線に入ってすぐに余裕を持って前を行く2頭を交わした。その後も脚色は衰えることなくあれよあれよという間にリードを広げ、後続を全く寄せ付けない圧倒的な走りで2着馬に5馬身つける圧勝を飾った。
鞍上の和田竜二騎手も「道悪がどうかと思っていましたが、展開も向いてスタミナ勝負にもっていこうとしていたので良かったです。前が引っ張ってくれて自分のペースを守れましたし、理想的な流れでした」と振り返った。
続けて「阪神で天皇賞・春が行われるので、この内容なら期待していいと思います」と、コメントしたように、大一番に向けて視界は良好だ。
直前で鞍上が乗り替わることになったユーキャンスマイルも善戦した。2着に敗れたものの、昨年王者の力を存分に発揮したレース内容であった。中団から直線へと突入し、アリストテレスと並走。同馬が失速した後は抜け出したディープボンドに追った。上がり3ハロンのタイムは36.8秒とメンバー最速を記録した。
そして、メンバー最速の上がり3ハロンを記録した馬がもう1頭。9番人気ながら見事3着となったナムラドノヴァンだ。最後の直線に入ると後方10番手から大外を伸び、2着のユーキャンスマイルに迫るシーン。鞍上の内田博幸騎手も「こういう馬場ですし、この馬のリズムで動かないで行きました。得意としない馬場でこれだけ走ってくれましたし、楽しみです。長い距離も合っているのでしょう」と確かな手応えをつかんだようだ。
思わぬ敗戦を喫したのは7着のアリストテレス。馬券圏内の3着はおろか掲示板からも外れてしまった。直線の手前まで中団の好位につけ、直線で3番手まで追い上げたところで失速してしまった。鞍上のC.ルメール騎手は「ずっと勝ち馬の後ろでした。最初は掛かっていました。直線は反応しましたが、突然苦しくなりました。敗因は馬場かもしれません」と、雨で渋った馬場に敗因を求めたが、本番へ不安を残す内容でもあった。
重馬場でよりスタミナが必要となった阪神大賞典で5馬身差の圧勝を果たしたディープボンド。ステイヤーが集結する天皇賞・春でもこの自信は大きなアドバンテージとなりそうだ。同レースで父キズナは14年、15年と2年連続1番人気に支持されながらもそれぞれ4着、7着に敗れた。ディープボンドは父が果たせなかった悲願を達成することができるのか……。早くも5月を待ち遠しく感じてしまうようなレースであった。