JRAフローラS(G2)人気薄ワンツー決着で「馬連4万1500円」の大波乱! 昨年との驚きの共通点とは……
25日、東京競馬場では2着馬までにオークス(G1)への優先出走権が与えられるフローラS(G2)が行われた。勝ったのは5番人気のクールキャット(牝3歳、美浦・奥村武厩舎)、2着には14番人気の伏兵スライリー(牝3歳、美浦・相沢郁厩舎)がともに先行して粘り込み、オークスの切符を手にした。
馬連は4万1500円をつけたが、これはレース名が「4歳牝馬特別」から現在の名称に変更された2001年以降では3番目という高配当となった。
クールキャットに騎乗したC.ルメール騎手はレース後、「今日は前目につけたいと思っていたので、スタートから出していきました」と話したように、積極的に位置を取りに行ったのが勝因だろう。
外枠が不利と言われる東京芝2000mで、絶望枠ともいえる8枠15番に入り、鞍上は重賞15連敗中のルメール騎手。前走のフラワーC(G3)では勝ち馬と0秒3差、ユーバーレーベンとは0秒1差だったことを考えれば、人気の盲点になっていたことは間違いない。
この勝利で、クールキャットはソダシが待ち受けるオークスに進むとみられるが、父がスクリーンヒーロー、母の父がダンスインザダークという血統からさらなる距離延長は大歓迎。スタミナ自慢のメジロ牝系も味方につければ、本番でもかなり面白い存在になりそうだ。
思い返せば、昨年のフローラSを制したウインマリリンも、クールキャットと同じくスクリーンヒーローの産駒だった。現役時代は4歳秋にジャパンC(G1)を制したように、スクリーンヒーロー産駒はどちらかというと晩成傾向が強く、3歳春以降に急激に力をつける馬が多い。昨年のウインマリリンは、トライアルを勝った後、本番オークスでも2着に好走。秋は結果が出なかったが、4歳を迎え、今年3月には日経賞(G2)を制覇している。
ウインマリリンと同様の成長曲線を描くなら、クールキャットもオークスではかなり怖い存在になり得るだろう。
そのクールキャットから1馬身差の2着に入り、オークスの優先出走権を獲得したスライリー。単勝オッズは88.3倍と全く人気はなかったが、2走前の菜の花賞(1勝クラス)では、後にアネモネS(L)を制したアナザーリリックに競り勝った実績の持ち主だった。
それでも前走のクイーンC(G3)では10着に大敗しており、ムラがある戦歴からも14番人気は妥当か。この馬に重い印を打つ要素は、クールキャットと同様にその血統に隠されていた。
スライリーの父は3冠馬のオルフェーヴル。その産駒はスプリンターからステイヤー、さらに芝ダート問わないその万能性が知られている。スライリーにとっては、初めての2000mへの距離延長がプラスに出た可能性が高い。
そして、実は昨年の2着馬ホウオウピースフルもまたオルフェーヴル産駒だったのだ。
つまり、昨年と今年の1~2着馬は同じ父だったということになる。今年の出走馬17頭の中で、スクリーンヒーロー産駒はクールキャットのみ、そしてオルフェーヴル産駒もスライリーだけだった。
もしレース前にこの事実に気付いていれば、馬連415倍も楽々ゲットできていたことだろう……。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。