JRA 「落馬競走中止」バスラットレオンがダービー参戦も好走は絶望的!? 過去にはキングカメハメハ、ディープスカイが優勝も……、NHKマイルC(G1)組の悲惨な現実
先週のNHKマイルC(G1)は、2番人気のシュネルマイスターが優勝。2001年のクロフネ以来、20年ぶりの外国産馬による勝利を挙げた。
その一方で、スタート直後に落馬競走中止となったのがバスラットレオン(牡3、栗東・矢作芳人厩舎)だ。同馬は前哨戦にあたるニュージーランドT(G2)を5馬身差で逃げ切る大楽勝だった。
勝ち馬シュネルマイスターに次ぐ3番人気の支持を集め、単勝オッズ一桁台となったのは1番人気グレナディアガーズを含め3頭のみ。4.6倍だったバスラットレオンと11.5倍で4番人気ホウオウアマゾンとは大きく離れており、NHKマイルCではオッズ的にも三つ巴の様相を呈していた。
人気の一角を担っていた有力馬がまさかのアクシデントに見舞われ、管理する矢作芳人調教師も「状態良かっただけに残念です。ただ馬も人も無事だったので。馬券を買ってくれた人には申し訳ない」とコメント。誰も責めることが出来ない落馬だったとはいえ、バスラットレオンを応援してくれたファンに対する気遣いを見せた。
何はともあれ、手綱を取っていた藤岡佑介騎手に大きなケガもなく、直後に行われた最終レースの騎乗も可能だったことは不幸中の幸いでもある。
結果的に不完全燃焼に終わったバスラットレオンだったが、次走で日本ダービー(G1)に参戦するという発表が12日、同馬を所有する広尾サラブレッド倶楽部のホームページで明らかとなった。
矢作厩舎としては昨年、コントレイルで制したダービーだが、NHKマイルC経由で出走したサトノインプレッサは4着と敗れた。
そして、2年連続で出走となったNHKマイルC経由でのダービー参戦も、近年は惨敗の歴史が苦戦を予感させている。
過去、NHKマイルからダービーに出走して優勝した馬は2002年タニノギムレット、04年キングカメハメハ、08年ディープスカイの3頭のみ。タニノギムレットは勝ち馬テレグノシスの斜行により、不利を受けて3着に敗れたが、残る2頭はNHKマイルCからの連勝でダービー馬に輝いたように、当時は好走する例もあった。
しかし、ディープスカイが優勝した08年を最後に、前走がNHKマイルCだった馬は、馬券圏内にすら入れない惨状が続いた。27頭が出走したが【0.0.0.27】 という悲惨な成績に終わっているのである。
「バスラットレオンについてはNHKマイルCに出走こそしましたが、落馬のため能力を発揮できないままに終わりました。全力疾走をしなかったことで余力が残っていることもあり、過去のデータに当てはまるかといえば完全に一致している訳でもありません。
そういう意味では、十分に期待できるかもしれませんが、問題は近年の低レベル化でしょう。ダービーを勝つような馬はNHKマイルを使わない例も多く、今回も落馬がなければ出走する可能性はかなり低かったでしょう」(競馬記者)
1800mでデビュー勝ちしたバスラットレオンだが、札幌2歳S(G3)ではソダシ、ユーバーレーベンといった牝馬2頭を相手に3着。2000mの京都2歳S(G3)6着を契機に、距離を短縮して5戦連続でマイル戦を使われている。
ここへきて、一気に800m延びるダービーの2400mは、マイルで好走していた馬にとって歓迎材料とはならないかもしれない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。