JRA山田敬士以来の「距離誤認」で新人騎手が暴走……ムチ連打に「もう1周あるんですが……」5番人気馬が悪夢の最下位で即刻の騎乗停止
「これはもう1周あるんですが、後ろを確認しながら、再びレースに戻れるかどうか……」
17日、園田競馬の7Rで悪夢のような出来事が起こってしまった。
9頭立て、ダート1870mのレースで、5番人気のヨハネスボーイ(牡4歳、兵庫・坂本和也厩舎)に騎乗していた大山龍太郎騎手は抜群のスタートを決めると、迷わずハナに立った。ここ数戦は好位から競馬していたヨハネスボーイだが「1頭飛ばして行きました、6番ヨハネスボーイ」という実況と共に、ぐんぐん後続を突き放していく。直線を迎えた頃には、約15馬身の差をつける大逃げとなった。
ここで大山龍騎手は迷わずスパートに入った。ムチを連打しながら渾身の力で馬を追うと、後続との差はさらに開いていく。じょじょに近づくゴール板。もし、このままレースが終われば衝撃的な大差勝ちになっていたかもしれない。
しかし、大山龍騎手の悪夢はここから始まった。ゴール板を大差で駆け抜けたヨハネスボーイと大山龍騎手だったが、レースはあと1周残されていたのだ。人馬にとって、あまりにも残酷な“現実”に大山龍騎手が気付いたのは、コーナーを回って向正面に入るところだった。
「これはもう1周あるんですが、後ろを確認しながら、再びレースに戻れるかどうか……」という悲しい実況の中、バツが悪そうに隊列に戻ろうとした大山龍騎手。だが、すでに全力を尽くしていたヨハネスボーイに力は残っておらず、最終的には大差の最下位でゴールした。
「うーん、やってしまいましたね……。大山龍騎手は今年の4月にデビューしたばかりの新人騎手で、ここまでは園田の新人の中で最高となる19勝。あと1つ勝てば重賞騎乗も可能になっただけに、余計な焦りがあったのかもしれません。
騎手の距離誤認といえば、JRAで3年前に山田敬士騎手がやらかしてしまい、約3か月間の騎乗停止処分になるなど大きな問題になりました」(競馬記者)
この事態を重く見た園田競馬は、大山龍騎手を即刻の騎乗停止処分に。この日、まだ4レースの騎乗が残っていた大山龍騎手だったが、すべて乗り替わりとなり、明日の騎乗も他の騎手に変更された。
「大逃げも驚きましたし、(1周目の)直線でムチを入れ始めた時は嫌な予感がしましたが、まさかのアクシデントでしたね。レースは1870mでしたが、820mのレースも同じスタート地点からの発走になります。なので大山龍騎手は、おそらく820mのレースと距離を誤認していたのかと……。
ただ、ヨハネスボーイはここ2走、大山龍騎手とのコンビで園田を1周回る1400mに出走していました。それだけに残念なミスだったと言えますね」(別の記者)
4月のデビューから、ここまで順調に勝ち星を重ねて19勝と、石堂響騎手が持つ新人最多勝利記録の更新も視野に入っていた大山龍騎手。主催者側からまだ正式な発表はないが、馬券が発売されていた以上、騎手の人為的ミスによる敗戦の責任は軽くない。
2018年に同様の距離誤認をしてしまったJRAの山田騎手が同年一杯の騎乗停止処分になったように、新人最多勝の記録更新は絶望的といえる状況だろう。
ただ、「距離誤認騎手」としてレッテルを貼られてしまった山田騎手はその後、関係者の信頼を取り戻し、昨年12月の朝日杯フューチュリティSでは、キャリア初のG1騎乗を成し遂げている。
今回の件は猛省する他ないが、すでにファンも認める「乗れる新人」大山龍騎手だけに、これを糧にさらに飛躍してほしい。(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。