JRA「伝説の新馬戦」は何故そう呼ばれるようになったのか!? ダノンスコーピオン快勝で注目度アップ、実はダービー馬シャフリヤールも条件を満たしていた?
先週、阪神競馬場で行われた日曜の5Rメイクデビュー阪神は、前評判の高かった馬が複数出走。頭数こそ7頭と少なかったが、これは相手が悪いと対決を避けた馬がいた影響もあっただろう。
このレースには、古馬相手に追い切りで先着したダノンスコーピオン(牡2、栗東・安田隆行厩舎)、新種牡馬キタサンブラックの期待馬コナブラック(牡2、栗東・清水久詞厩舎)、陣営からリスグラシューに近いイメージがあると評されたルージュラテール(牝2、栗東・矢作芳人厩舎)が対決。ハイレベルの一戦を制したのは川田将雅騎手とダノンスコーピオンのコンビだった。
元JRA騎手の安藤勝己氏も自身のTwitterで「今日の阪神5Rはメンバー良すぎて少頭数って注目の新馬戦。G1級が何頭かおって、ゆくゆく伝説の…ってなるかもしれないよ」と評したように、このレースから未来のG1馬が誕生しても不思議ではなさそうだ。
ところでこの「伝説の新馬戦」というフレーズだが、その定義は諸説ある。例としてはとんでもない大波乱の決着となったミナレットや、ミホノブルボンのように逃げ馬として有名な馬が、デビュー戦では後のイメージとは程遠い直線一気で勝利を挙げていたり……。
後のG1馬が同じレースで一堂に会したケースも有名だ。デビュー戦は最強クラスの馬もいれば、生涯未勝利で終わる馬も同じく出走することもある。実力馬同士が対決した場合、敗れた馬が後のG1馬だったという例も珍しくはない。
なかでも最もメジャーなものとされるのは、2008年の10月26日に京都で行われた新馬戦(芝1800m)だろう。このレースには後のG1馬がなんと3頭出走していたのである。
1着のアンライバルドは翌年の皐月賞馬となり、3着のブエナビスタは阪神JFのほかにも桜花賞(G1)とオークス(G1)を制して牝馬二冠を達成。古馬となってからはヴィクトリアマイル(G1)、秋の天皇賞(G1)も勝利した名牝だ。
それどころか、4着のスリーロールスは菊花賞(G1)を優勝。2着リーチザクラウンはG1こそ勝利することが出来なかったが、日本ダービー(G1)ではロジユニヴァースの2着に入ったように、新馬戦ながら優にG1級のメンバーが集まるレアケースだった。
この菊花賞当日に行われる新馬戦に「伝説」の印象を決定づけたのが、翌年の10月25日に京都で行われた新馬戦(芝1800m)だ。
前年の4着馬スリーロールスが菊花賞馬に輝いたこの日、ローズキングダムがヴィクトワールピサとの一騎打ちを制してデビュー勝ち。その後も朝日杯FS(G1)を制し、翌年のジャパンC(G1)ではブエナビスタ(1位入線2位降着)を破って優勝する。
そして2着に敗れたヴィクトワールピサは、皐月賞でローズキングダムを破って勝利すると、暮れの有馬記念(G1)を3歳にして優勝。古馬となった翌年にはドバイワールドC(G1)で日本馬として初の勝利を挙げたのである。
また、今年のクラシックでも、ダービーの栄冠を手にしたシャフリヤールがデビュー勝ちしたのは、偶然にも伝説の新馬戦といわれている菊花賞当日だった。このレースでクビ差2着に惜敗したヴィヴァンがもし、今後G1を勝つようなことがあれば、それこそ競馬史に残る大記録となるのかもしれない。