JRA宝塚記念(G1)「117億円」が一瞬で紙くずに……。ゴールドシップの「超後方ポツン」に横山典弘も苦笑い!? “愛されキャラ”の怪走に響き渡った悲鳴、怒号、落胆の声

 今週末の阪神競馬場では宝塚記念(G1)が開催される。単勝1倍台に支持された大本命馬が敗れるなど波乱の続いた春G1だが、今年の上半期の掉尾を飾るグランプリレースには、どのような結末が待っているだろうか。

 同レースは雨が降りやすい梅雨に行われる上に、秋の始動に尾を引く6月下旬の日程に加え、荒れた馬場を嫌ったトップクラスの馬が回避することも珍しくないのも特徴の一つである。

 暮れのグランプリ・有馬記念(G1)に比してメンバーが手薄になりやすく、少頭数で行われることも多い。このレースで初G1勝ちとなる馬が出やすいこともこのような背景もあってだろう。

 古くはメジロライアン、マーベラスサンデー、サイレンススズカ、メイショウドトウ。直近の10年でも2011年アーネストリー、15年ラブリーデイ、18年ミッキーロケットがこのケースに該当する。

 また、芝2200mという紛れのある非根幹距離の条件も、波乱の決着を後押ししているかもしれない。過去10年でも3連単の払戻が10万円を超える大波乱となった例が4度もあるほどだ。

 なかでも最も競馬ファンを狼狽させたのは15年の宝塚記念だろう。この年の1番人気は横山典弘騎手とゴールドシップのコンビである。ゴールドシップは13年、14年と連覇し、絶大な相性の良さを誇った。しかも、2年連続で人気を裏切った春の天皇賞(G1)を三度目の正直で見事に優勝したこともあり、単勝オッズ1.9倍の断然人気にファンが支持したのも無理もない。

 だが、この日のゴールドシップはいつも以上に破天荒な姿を見せた。目隠しされたゴールドシップは最初にゲート入り。しばらくは落ち着いていたが、内隣のトーホウジャッカルがチャカついたことも影響したのか徐々に冷静さを欠いていった。

 最後にラブリーデイがゲートへ入る頃には、トーホウジャッカルを威嚇するように立ち上がった。一度目は横山典騎手が「待ってくれ」と声を上げたことで事なきを得たかに思われたが、ゲートが開くと同時に再び立ち上がってしまった。

 その後、何とかゲートを出たものの、10馬身以上も出遅れる致命的なロス。ゴールドシップに一体何があったのか。大本命馬のまさかの光景を目の当たりにした観衆からは、悲鳴、怒号、落胆の声が響き渡った。

 結局、レースでも最後まで後方のまま15着に大敗。6番人気の伏兵ラブリーデイの勝利で3連単の払戻は52万8510円の大波乱となり、ゴールドシップ絡みの馬券「約117億円」は、一瞬にして紙くずへと変わったのである。

 レース後、ゴールドシップに騎乗した横山典騎手でさえ「彼に聞かなきゃ分からない」と苦笑い。1頭だけ離れた後方で競馬をする様を一部のファンから「後方ポツン」といわれる横山典騎手ですら予想外のアクシデント。管理する須貝尚介調教師も「普段から突拍子もないことをするが、この馬だけは本当に分からん」とコメントしたほどに頭を悩ませた。

 この不可解な凡走がきっかけとなったのか、ターフを沸かせた芦毛の怪物は秋のジャパンC(G1)を2番人気で10着、有馬記念でも1番人気の支持を受けながら8着に大敗し、このレースを最後に現役生活と別れを告げる。

 その一方で、レースでは破天荒なゴールドシップだが、それ以外では愛くるしい姿を見せる一面もあり、そのギャップにゾッコンのファンも多かった。危うさを感じさせながらも決めるときは決める“クセ馬” だけに、なにをやっても許せてしまいそうなところもまた、大きな魅力だった。

 引退式で一番思い出されることについて横山典騎手が「宝塚のゲートですか。一瞬にして何十億と紙くずにしてすみませんでした」とコメントをした際、見守ったファンがドッと沸いた辺りもどこか憎めないゴールドシップの人柄ならぬ“馬柄”の伝わってくるシーンといえる。

 種牡馬としても今年のオークス馬ユーバーレーベンを出したように、第二の人生でも期待されるゴールドシップ。これからもファンを楽しませ続けてくれるに違いない。

※本記事は2021年に公開されたものと同内容です。

(文=黒井零)

<著者プロフィール>
 1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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