JRA C.ルメール函館「逃亡」が生んだ快勝劇!? 「不完全燃焼」ボーデンとヴァイスメテオールに騎手の明暗、 丸山元気のリベンジを呼び寄せた裏事情

 先週末、福島競馬場で開催された3歳の中距離重賞・ラジオNIKKEI賞(G3)は、丸山元気騎手の4番人気ヴァイスメテオール(牡3、美浦・木村哲也厩舎)が優勝。2着ワールドリバイバルに2馬身半の差をつける快勝で、秋の飛躍を予感させる内容だった。

 この勝利に丸山騎手は「イメージ通り乗れてよかったです。リズム良く行けましたし、手応えも楽でしたね」と会心の勝利を振り返り、ヴァイスメテオールを管理する木村調教師も「強い競馬でしたね。良い秋を迎えることが出来る競馬が出来ました。この後はゆっくりと休ませます」と手応えを掴んだ様子。

 その一方で、木村厩舎はラジオNIKKEI賞に1番人気のボーデンと4番人気のヴァイスメテオールの2頭が出走。まさに「2頭出しは人気のない方を狙え」という競馬の格言通りの結果となった。

 下馬評を覆して勝利したヴァイスメテオールに対し、1番人気に推されながら6着に完敗したのは武藤雅騎手とボーデンのコンビだ。

 実力的に勝ち負けを期待されたが、スタートで後手を踏むと、道中もリズムに乗れないまま後方からの競馬。ようやく動き出したと思えば、最終コーナーでも大外を回す大味な騎乗で実力を発揮できないまま終わってしまった印象である。

 さらに開幕週の福島は内が伸びる馬場状態。この日のレースも外を回した馬の苦戦が目立っていた。それだけに、1枠2番の内枠を活かし、距離のロスが少ない騎乗で上手く立ち回った丸山騎手と、終始外々を回らされた武藤騎手の明暗が際立つ結果となった。

「騎手の差でしょうね。ヴァイスメテオールはデビュー2戦で丸山騎手が乗っていたため、馬の癖なども把握していてイメージが出来ていました。対するボーデンの武藤騎手は騎乗を予定していた北村宏司騎手の怪我によって急遽回ってきたチャンス。

デビューから3戦の手綱を執っていた川田将雅騎手でも『能力の高い馬ですが、非常にコントロールが難しい』と言っていたように気性面に課題のある馬でした。トップクラスのジョッキーならまだしも、経験が浅い若手騎手のテン乗りですから、この結果も仕方のないところでしょう」(某トラックマン)

 また、丸山騎手は一度ヴァイスメテオールを降ろされた中で再び巡ってきたチャンス。何とかしようという意気込みが違っていたのは当然かもしれない。

 関係者の話によると、吉田勝己氏名義のボーデンとヴェイルネビュラの2頭を田辺裕信騎手と丸山騎手に振り分ける事になっていたため、水面下で田辺騎手がヴァイスメテオールに騎乗する可能性もあったという。

 元を正せば近2戦で手綱を任されていたC.ルメール騎手が、暑さを理由に函館での騎乗を選択した関係でこのような流れになったというのが裏事情のようだ。

 ただ、丸山騎手は過去にステルヴィオを任されたこともあるように、ノーザンのお気に入りで関東ではクラブ馬への騎乗も多い。好結果を導いたことで、さらに評価も上がったはず。

 今後もルメール騎手に有力馬がかち合った際には、大舞台でのチャンスも回ってくるのではないか。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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