JRA 「ミスター千直」襲名へ!? 西田雄一郎でも村田一誠でもない、アイビスSD(G3)“隠れ千直巧者”に一発の期待
JRAで唯一、直線のみのコースで行われる重賞・アイビスサマーダッシュ(G3)が25日、新潟競馬場で開催される。
前哨戦ともいえる5月の韋駄天S(OP)で人気馬を蹴散らして優勝したのが、タマモメイトウ(牡5歳、栗東・藤岡健一厩舎)だ。
本馬にとって初の“千直”となった一戦は、新潟連続開催の最終日。雨の影響が残り、かなり時計の掛かる馬場で行われた。
「スタートは速くないので」とテン乗りの津村明秀騎手がレース後に話したように、前半は後方に控えて末脚を温存。「後ろから行って外ラチに寄って行くことを考えていました」という鞍上の言葉通り、内目の3枠6番からやや後手を踏んだタマモメイトウは道中大外に位置を取り、馬群を縫うように進出。メンバー最速となる上がり3ハロン33秒4の末脚で、最後は有力各馬をまとめて差し切った。
14番人気馬での勝利に津村騎手は「ゴール前ではグイグイ伸びて、際どい勝負になりましたが、良く伸びて交わしてくれました」とパートナーを褒め称えた。
そのレースで1番人気に支持され9着に敗れたのが、今回も最有力候補と目されるライオンボスだ。前走はタマモメイトウが1秒1の差をつけたとはいえ、現役屈指の“千直巧者”相手に2連勝することは簡単ではないだろう。
まず、前走で5kgあったライオンボスとの斤量差が今回は1kgに縮まる。そして、前走とは打って変わって高速決着が見込まれる開幕週の開催は“百獣の王”にはうってつけの馬場になるだろう。鞍上を務める鮫島克駿騎手も新潟の直線コースを得意としており、昨年2着の雪辱を果たすためにも、気合十分で臨むはずだ。
しかし、タマモメイトウと2度目のコンビを組む津村騎手も実は隠れた“千直巧者”である。千直マスターといえば、現調教師で元騎手の西田雄一郎師や村田一誠師が有名だが、2015年以降の成績で西田師の11勝に次ぐ10勝を挙げているのが津村騎手である(藤田菜七子騎手とタイ)。
そして、この1年で津村騎手の千直巧者ぶりにはさらに磨きがかかっている。昨年9月の雷光特別(1勝クラス)で、4番人気のトミケンルーアを2着に導いたのを皮切りに韋駄天Sまで6機会連続で馬券圏内を継続中。勝利はタマモメイトウの韋駄天Sだけだが、12番人気のリュッカで3着など人気薄での激走も目立つ。脚質も逃げから追い込みまで実に多彩。現役ではこのコースを最もよく知る騎手かもしれない。
「津村騎手に限ったことではないですが、千直コースでは外ラチを頼ることが必勝法の一つです。レース後のコメントでは津村騎手の口から『外ラチ』というワードが出ることも多く、意識していることがわかります。
前走(韋駄天S)は6番枠から外に寄せていった分、結構な距離ロスが生じました。今回は、斤量・馬場など条件は厳しくなりますが、外枠を引けば2連勝があってもおかしくないと思いますよ」(競馬誌ライター)
かつて千直競馬でツートップ的な存在だった西田雄一郎現調教師と村田一誠元騎手(現調教師)は、ともに昨年末で騎手を引退。津村騎手が、不在となった「ミスター千直」襲名に名乗りを上げる。