JRA C.ルメール完璧エスコートで「夏休みバッシング」封印!? 人馬揃って“休み明け”コンビが秋G1に名乗り、「ルメさんにやられた」マジックキャッスル惜敗に国枝師も脱帽
1日、函館競馬場で行われた牝馬の重賞クイーンS(G3)は、C.ルメール騎手と初コンビを組んだテルツェット(牝4、美浦・和田正一郎厩舎)が優勝。昨夏から4連勝で重賞制覇した実力馬が再び上昇気流に乗った。
初のG1挑戦となった前走のヴィクトリアマイル(G1)は、ルメール騎手が手綱を取ったグランアレグリアの前に完敗の14着。このときコンビを組んでいたM.デムーロ騎手はレース後に「G1で少しプレッシャーがあったのか、パドックで興奮していました」とコメント。大舞台を前に冷静さを欠いたことも、敗因のひとつだったのだろう。
そして、休み明けのクイーンSでテルツェットは、ルメール騎手と新たにコンビを結成した。騎乗予定のなかった先週の週末、ゴルフや乗馬でリフレッシュしたルメール騎手はバカンスを満喫する様子をインスタグラムに載せていた。
しかし、一部ではこれを快く思わないファンからの意見も出るなど賛否両論だった。
一般企業でも夏季休暇が認められる中、個人事業主の騎手が休みを取ることは基本的に何の問題もないだろう。ただでさえ、コロナ禍の状況で外国人騎手には帰国もままならない状況。ルメール騎手がしっかりと結果を残して、過度な「夏休みバッシング」を封印してみせたのもさすがである。
例年、前走ヴィクトリアマイル組の好走する傾向にあるクイーンS。12頭立てで行われた芝1800m戦は、人気馬に騎乗したそれぞれの騎手の駆け引きが明暗を分かつ結果となった。
レースは先手を取ったローザノワールが逃げ、1番人気マジックキャッスルはいつもより前目の4番手を追走する積極策を採る。対するルメール騎手のテルツェットは“平常運転”といえる後方待機策での競馬。2番手に2番人気ドナアトラエンテの川田将雅騎手がつけ、フェアリーポルカの三浦皇成騎手も早めの進出をする。
そのため、3コーナーから4コーナーに掛けてのポジション争いが必然的に激しくなり、これに伴って戸崎騎手のマジックキャッスルも気持ち早めの仕掛けとなった。そんな先行勢を見ながら、密かにほくそ笑んでいたのがルメール騎手かもしれない。
最後の直線でもまだ最後方にいたテルツェットだが、ルメール騎手の技が冴えたのはそのコース取り。後ろの馬は、得てして外を回さざるを得なくなりやすいのだが、ルメール騎手が選択したのはあえての内だった。
それこそ詰まってしまえば絶体絶命のピンチとなるリスクもあったが、バテたドナアトラエンテと外のサトノセシルの間を縫うように抜け出したテルツェット。先に抜け出したマジックキャッスルをクビ交わしたところがゴールだった。
「直線は前の馬が動いていたので、ゴールまで良い目標にすることが出来た。G1では難しかったのですが、パワーアップしたら、秋は楽しみです」
完璧エスコートで勝利へと導いたルメール騎手は、パートナーに今後のさらなるパワーアップを期待するコメント。
対する首差で惜敗したマジックキャッスルの戸崎騎手は「出しに行った分、最後でちょっと差されてしまった」、国枝師は「今日はルメさんにうまくやられました」と、ルメール騎手に脱帽。9冠馬アーモンドアイで名コンビだったルメール騎手の手腕を熟知している国枝師だけに、こればかりは敵ながら天晴れというしかないのだろう。
今回、休み明けだったテルツェットとルメール騎手。リフレッシュ効果は人馬ともに最高の結果へと繋がったようだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。