JRA川田将雅「能力の高さで勝てた」リブースト余裕の仕上げで完勝! 福永祐一“してやったり”も返り討ち、多過ぎた“収穫”に底知れぬ将来性
8日、新潟競馬場で行われた5Rの2歳新馬戦は、川田将雅騎手の1番人気リブースト(牡2、栗東・佐々木晶三厩舎)が優勝。灼熱の新潟で楽しみな馬がデビュー勝ちを決めた。
「能力の高さで勝ち切った」
コンビを組んだ川田騎手がそう振り返った通り、決して楽なレースではなかった。
だが、馬なりで後続を突き放すような、能力の違いで押し切るレースとは違った凄みも感じられるレース内容でもあったこともまた確かだ。
人気馬に騎乗する騎手心理として、通常なら好位につけて抜け出すオーソドックスなレースを心掛けるのはよくあること。リブーストの川田騎手にしても、それは例外ではなかったのではないか。
12頭立ての芝2000m戦。スタートは悪くなかったリブーストだが、行き脚がつかず後方のまま。鞍上が促しても一向に進んでいかず、ついには最後方。3コーナーに差し掛かった辺りで、ようやく外から進出。捲くるような形で最後の直線は7番手まで押し上げる。
このまま外に出して末脚を炸裂させるのかに見えたが、川田騎手が選択したのは馬群が凝縮していた内。能力が一枚上の馬であれば、無難な乗り方を選択するところだが、これが意図的なものだったのかどうかはわからない。
そして、この選択はさらなるピンチを呼び込んでしまうこととなる。
直線半ばで馬場の中ほどに進路を取ったヴァンシャンテが壁になり、頭を上げるシーンもあったが、何とかインで進路を切り替えてやり過ごす。何とかピンチを切り抜けたと安心する暇もなく、今度は内から福永祐一騎手のスズノマーベリックに押し返されて再び進路がなくなってしまった。
普通の馬なら万事休すといっても過言ではない展開の中、ここからがリブーストの本領発揮といえるのだろう。何とか外に進路を確保すると末脚一閃。先に抜け出したスズノマーベリックをあっさりと交わしてゴール。2着馬との差は3/4でしかないものの、1頭だけ次元の違う走りを披露した。
「デビュー戦でここまで厳しい競馬をさせたことは川田騎手もさすがに想定外だったのではないでしょうか。レース展開としては、完全に人気馬が飛ぶケースだったのですが、少々の不利は問題にしないのも強い馬の証です。
気の毒だったのは、3着スズノマーベリックに騎乗していた福永騎手かもしれません。ライバルとの進路取りに競り勝って、『してやったり』というところでしたが、相手が悪過ぎましたね」(競馬記者)
陣営が2000mでデビューさせたのは、おそらく来春のクラシックを見据えてのこと。
管理する佐々木師でさえ「無理だと思った」と敗戦を覚悟したほどの不利。それでもまだ余裕残しの仕上げで、ここまでの強さを見せた内容には底知れぬ将来性を垣間見せた。
川田騎手は「動けるようになったら楽しみ」と今後の課題を挙げたが、この経験は今後も必ず生きて来るはずだ。予期せぬ展開となったにもかかわらず、逆境を跳ね返してしっかりと勝ち切ったことに意味がある。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。