JRAあの武豊とメイケイエールに“完封”勝利!「ハート様」とレイハリアのコンビが短距離重賞路線のスターダムを駆け上がる⁉
8月29日、札幌メインのキーンランドC(G3)を制して、破竹の4連勝を飾ったレイハリア(牝3歳、美浦・田島俊明厩舎)。レースを振り返ると、鞍上の亀田温心騎手の好騎乗が目立つレースでもあった。
6枠12番ゲートから発走直後、好スタートを決めたレイハリアはそのままハナに立つも、コース内側に移動する際に、武豊騎手が騎乗するメイケイエールの前をチラリと横切る。
これに反応したかのように、首を上げ下げするメイケイエール。同馬は前に馬がいると追いかけて行きたがる癖があり、案の定、スイッチが入った同馬はレイハリアを追い抜き、ハナに立ってしまった。
現役有数の“暴れ馬”として名高いメイケイエールは、過去の桜花賞(G1)ではスタートで出負けした後、制御不能となり3コーナー過ぎに一気に先頭へ。その道中、内側から斜行した同馬に馬体をぶつけられたソングラインは外へと追いやられる格好となり、競馬にならなかったケースもあった。
こうした経緯もあったことから、メイケイエールに追い抜かされたレイハリアの亀田騎手にも一瞬、緊張が走ったかもしれない。ところが20歳の若武者は、慌てる素振りもみせず冷静に番手をキープ。上手く折り合いをつけて、最後の直線では馬群に沈むメイケイエールを交わして先頭へ。結果、2着エイティーンガール以下をアタマ差で退けて、レイハリアを4連勝に導いた。
レース後、7着に敗れたメイケイエールの武豊騎手は「ゲートを出て先行する形になったけど、4コーナーでは手応えがなくて…。うーん、難しい馬ですね」と話したとおり、スタート間もなくスイッチが入り、最後まで脚が保たなかったことが敗因とみられるコメントを残している。
その武豊騎手を向こうにまわして勝利した亀田騎手は「道中でメイケイエールが上がってきたときも、2番手に控えて外に出せればいいと思っていました」とコメント。
メイケイエールのスイッチが入り、ハナを奪われたあとも自らは2・3番手で道中をやり過ごし「最後はがむしゃらに、ひたすら追っていました」と語る会心の騎乗を披露。まさにその名の温心(ハート)の通り、強心臓ぶりを遺憾なく発揮して、あの武豊騎手とメイケイエールのコンビを“完封”したのだった。
レイハリアのここまでの戦績を振り返れば、デビュー戦以降は紆余曲折を経て、一気にスターダムを駆け上がってきた様がみえる。昨年12月の新馬戦は2着。2戦目は無念の出走取り消しで、年明け2戦は4・5着と未勝利脱出ならず。芝やダートで試行錯誤を繰り返した挙げ句、今年3月の中山の未勝利戦はダートで勝ち上がっていた。
その後、4月17日の新潟の芝コースで行われた雪うさぎ賞(1勝クラス)では、亀田騎手に乗り替わって勝利。さらに5月29日の葵ステークス(重賞)では、13番人気ながらハナ差で優勝。同レース2着ヨカヨカは後に北九州記念を制し、同3着オールアットワンスはアイビスSD(ともにG3)を優勝したことを考慮すると、秋以降のレイハリアがどんな走りをみせてくれるか注目必至だ。
一方で、今後もレイハリアとコンビを組むことが濃厚な亀田騎手。そのキラキラネームはファンに愛され、「ハート様」とよばれることもしばしば。しかし同期の35期生のなかでは岩田望来騎手や団野大成騎手、菅原明良騎手が通算100勝超えを果たすなか、自身は現在73勝。同期のライバルたちをリードするには、自身のキラキラネーム以上のインパクトが欲しいのが現状だ。
そういう意味では、亀田騎手にとってレイハリアとの出会いは大きなチャンス。すでにスプリンターズS(G1)への出走は自重しているものの、秋以降も短距離路線を賑わすことができれば伸び盛りの35期生のなかでも、ひと際注目を集める存在になるはずだ。
葵ステークスはハナ差、キーンランドCはクビ差で制したように、よほど手が合うのだろうか、相性のよい亀田騎手とレイハリアのコンビ。秋競馬以降、人馬ともにスターダムを駆け上がることができるか。引き続き注目していきたい。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。