JRA話題の「5億円馬」に漂う嫌な予感!? 全兄は迷走続きで見せ場なく惨敗、母はセレクトセール高額落札の常連も……、クラシック無縁の産駒に“期待ハズレ”の匂い
日本最大の競走馬セリ市となるセレクトセール。例年、我々のような一般庶民には手が届かない高額でサラブレッドが落札されるシーンに、思わず溜息をつくことも珍しくない。
無敗の三冠馬ディープインパクトやデアリングタクトも本セールの出身。将来のクラシック候補を手に入れようとする馬主にとっても、熱の入る競馬界の一大イベントだ。
そして、未来のG1馬が潜んでいるかもしれない昨年のこのセールで、大きな話題を集めたのは産駒が高額落札されることで有名なシーヴ。同馬が日本に輸入される以前に出産したキャスリンソフィアがケンタッキーオークス(G1)を勝っていることもあってか、産駒への評価は高い。
昨年はシーヴの2019が1歳セリ史上最高額となる5億1000万円(税抜)で落札され、「ショウナン」の冠名で知られるオーナーの国本哲秀氏は「10億まで降りないつもりだった」「今日はもう(他馬を)見なかった。最初から決めていました」と振り返っていた。
また、翌日には父がハーツクライに変わったシーヴの2020も、三輪ホールディングによって2億1000万円(税抜)で落札されたのだから、シーヴへの極めて高い評価が伝わってくる。
その一方で、デビューを控えるシーヴの産駒たちが、落札額に引けを取らないほどの走りを披露できるのかとなると、事情は少々異なる。
なぜなら既にデビューをしている兄姉が、これといった活躍をしていないからに他ならないからだ。
2017年生まれのシャリーアルマニカ(父Street Boss)は、デビュー戦の3歳未勝利を2着に敗れると、調教中の放馬で安楽死。18年生まれのサトノスカイターフ(父ディープインパクト)は、同馬を管理する池江泰寿調教師も「このレベルの馬なら、ダービーが目標になってくる」と期待していたが、7戦してわずか1勝と期待ハズレの現状となっている。
ディープインパクト産駒ということもあり、クラシック候補として注目を浴びたサトノスカイターフだが、使われる距離もデビュー戦の芝2000mから徐々に短くなっていく。ついには、芝1400mの1勝クラスですら13着と惨敗したのが、先週12日の中京最終レースだった。クラシックを意識した中距離デビューも、不振の末に辿り着いた短距離戦で見せ場もない敗れ方をしたのでは、関係者の期待と大きく乖離する迷走ともいえる。
そこで気になるのが、デビュー間近と噂されるショウナンアデイブ(牡2、栗東・高野友和厩舎)のスケールだろう。
本馬は先述したシーヴの2019に該当する。同じくディープインパクト産駒の兄サトノスカイターフが、“評判倒れ”となっていることから、こちらにもどことなく危険な匂いが漂う。
幸い、ショウナンアデイブは見栄えのする馬でパワーもありそうとのこと。まだ2歳で気性面に幼さは残っているものの、素質を感じるという声も出たのは好材料だ。
母シーヴの評価を上げるためにも、弟に懸かる期待は大きくなるばかり。「5億円馬」は結果を残せなかった兄姉の前例を覆して、その高額な落札額に見劣らないだけの走りを披露できるだろうか。
嫌な予感が当たらないことを祈るばかりだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。