JRAシャフリヤール「神戸新聞杯」好走なら菊当確!? 同じ菊花賞トライアルでも過去20年でわずか2勝……、セントライト記念馬はなぜ菊花賞で苦戦するのか

アサマノイタズラ 撮影:Ruriko.I

 20日、中山競馬場で行われた菊花賞トライアル・セントライト記念(G2)は、9番人気の伏兵アサマノイタズラ(牡3、美浦・手塚貴久厩舎)が勝利。穴馬の快走に陣営も菊花賞獲りへ意欲を見せた。

 田辺騎手が皐月賞、ダービーでコンビを組んだタイトルホルダーは、横山武史騎手とのコンビが発表。アサマノイタズラは、デビュー戦から続けて騎乗していた嶋田純次騎手からの乗り替わりでこれが初コンビとなった。

 3月のスプリングS(G2)で2着に入り、素質の一端を垣間見せていたアアサマノイタズラだが、近2走は惨敗続き。2走前の皐月賞(G1)は16頭立ての最下位、前走のラジオNIKKEI賞(G3)でも5番人気に推されながら12着と精彩を欠いていた。

 レース後、田辺騎手は「勝ち切ってくれるとはびっくりしました」、手塚師も「びっくりしました。想像もしていませんでした」とコメント。近走不振だっただけに、春のクラシック出走組、夏の上がり馬を退けた激走に関係者ですら驚きを隠せなかった。

「正直なところ余裕残しの状態だったので、良い形で本番に行けます。もう一つ大きいところを狙って行きたいです」

 嬉しい誤算に本番である菊花賞(G1)への手応えを掴んだ田辺騎手のコメントだが、セントライト記念経由の馬が本番で苦戦している傾向は気になるところだ。

 過去10年の菊花賞で優勝した馬は2015年のキタサンブラックのみ。これを20年まで遡っても01年のマンハッタンカフェがいる程度。つまり、セントライト記念を使われた馬の菊花賞好走は、ほぼ絶望的ともいえる状況が続いているのである。

 この最たる理由はやはり「西高東低」といわれる競走馬の「東西格差」の大きさによるものと考えるのが妥当だろう。

 連勝で本番を制したキタサンブラックは関西馬。マンハッタンカフェが、セントライト記念4着から菊の大輪を咲かせたのもレアケースなら、ラジオNIKKEI賞(G3)2着から直行で優勝したフィエールマンなどは異例中の異例ともいえる。

 馬券圏内の3着以内に条件を広げてみても、54頭で18勝の関西馬に対し、6頭で2勝の関東馬の成績が見劣ることは明白。こういった苦戦の歴史を考慮すると、やはり今年のセントライト記念組も厳しい結果が待っていそうだ。

 対する神戸新聞杯(G2)経由組は、セントライト記念組に大差をつける15勝。勝率にして75%なのだから、狙わない理由がない。

 神戸新聞杯に出走予定のシャフリヤールは、最大の強敵となるはずだったエフフォーリアが、早々に菊花賞回避を表明。陣営はまだ菊花賞参戦を明言していないものの、主戦の福永祐一騎手には、昨年の三冠馬コントレイルの存在がある。同馬が秋の天皇賞(G1)を目標としていることから、あえて鞍上問題の発生する天皇賞に出走する見込みは薄い。

 となれば、条件を満たすシャフリヤールに「菊当確」のランプが点灯してもおかしくない状況だ。全兄のアルアインが菊花賞を7着に敗れ、中距離で活躍しただけに、距離延長に一抹の不安はある。

 だが、仮に敗れるようなことがあっても、菊花賞馬が潜んでいるとすれば、今年も神戸新聞杯組が濃厚か。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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