シャフリヤール撃破でステラヴェローチェが「主役交代」に名乗り! ライバル圧倒は「36年ぶり」恩恵のみにあらず、元JRA安藤勝己氏が指摘した2頭の明暗

ステラヴェローチェ 撮影:Ruriko.I

 26日、中京競馬場で行われた菊花賞トライアル・神戸新聞杯(G2)は、吉田隼人騎手の2番人気ステラヴェローチェ(牡3、栗東・須貝尚介厩舎)が優勝。秋の始動戦を完璧な勝利で飾り、ラスト一冠となる菊花賞(G1)獲りに大きく前進した。

 単勝オッズ1倍台後半の断然人気を集めたのは、今年のダービー馬シャフリヤールだった。2頭はこれまで共同通信杯(G3)と日本ダービー(G1)と、二度の直接対決があったものの、いずれもシャフリヤールが勝利。中京コースで無類の勝負強さを誇る福永祐一騎手とのコンビということも人気に拍車が掛かった。

「こういう馬場で最後はバテバテになりましたが、よく交わしてくれました。前半のレースから馬場を意識して、力がある馬がいたので、どっちを通るのかなと見ていました。成長してくれましたし、何しろ馬場がステラヴェローチェに向いたと思います」

 レース後のコメントで吉田隼騎手が振り返ったように、午前中から土砂降りの雨が続いた中京競馬場。芝コースは当日朝の良馬場から徐々に悪化し、メインレースを迎える頃にはついに不良となった。晴雨兼用タイプのステラヴェローチェとはいえ、他馬が苦にする分だけ有利な条件で走れたことも大きかった。

 10頭立て芝2200mのレース。先手を主張したテイエムタツマキがハナに立ってマイペースの逃げを打つ。好位5番手につけたシャフリヤールに対し、ステラヴェローチェは後ろから2番手という大胆な位置からの競馬。道中は行きたがる素振りも見せ、後ろ過ぎるのではないかという懸念もあった。

 だが、各馬が動き始めた3~4コーナーに掛けても、吉田隼騎手が見ていたのはやはりシャフリヤールの後ろ姿。ライバルが外を回すのを確認してから、最後の直線で内を突いた判断も功を奏した。

「切れが身上のシャフリヤールにとって不良馬場が堪えたのは間違いないでしょう。とはいえ、ステラヴェローチェも決して渋った馬場の恩恵だけというわけでもなさそうです。4着に敗れたシャフリヤールには、0秒7とハッキリした差をつけていますし、最後方に近い位置取りから上がり3ハロン最速の脚で差し切りました。

シャフリヤールは全兄アルアインが芝2000mのG1を2勝した中距離色の強い血統。本番の3000mは歓迎といえなさそうなだけに、主役交代を印象付けた勝利でしたね。それにしても吉田隼騎手の『あえて馬群に入る』判断はお見事でした。あそこでもし外を回していたら、2着馬とは半馬身差だっただけに、わからなかったかもしれません」(競馬記者)

 勿論、これだけで2頭の立場が完全に逆転したとはいえないものの、次走への課題を残したシャフリヤールに比べてステラヴェローチェ陣営には得たものも多かった。

 元JRA騎手の安藤勝己氏は自身の公式Twitterで「ステラヴェローチェ。道悪の鬼ではあるけど、直線で馬群を割る競馬を経験させて間違いなく本番に繋がる勝ち方。これを機に一皮も二皮も剥けてくる。シャフリヤールの敗因は馬場で明らかとはいえ、負けられん立場やからいつもと戦法を変えたからね。距離に限界が見えたことと、ダメージが少し気になる」と、2頭の今後を分析。

 少なくとも安藤氏の見解的には、ステラヴェローチェ優勢と見ていることが伝わる内容である。血統面でも父のバゴは、2010年の菊花賞馬ビッグウィークを出しており、距離克服の余地は十分にあるはず。

 凱旋門賞(G1)にも登録されたほど能力を評価されていたステラヴェローチェ。不良の神戸新聞杯は、スピードヒーローが勝った1985年以来となったが、この勝利を36年ぶりのレアケースと甘く見ていたら、菊花賞では痛い目に遭いそうだ。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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