JRA福永祐一「申し訳ない」“勝率100%”シャフリヤールは「何故」敗れたのか。道悪適性だけで片付けられない安藤勝己氏も示唆した「不安要素」とは

ステラヴェローチェ 撮影:Ruriko.I

 26日、中京競馬場で行われた神戸新聞杯(G2)は、2番人気のステラヴェローチェが勝利。春は皐月賞(G1)、日本ダービー(G1)ともに3着に泣いた“善戦マン”が、3度目の正直となる菊花賞(G1)へ大きく前進した。

 レース後、鞍上の吉田隼人騎手が「前哨戦を勝ってくれたので、次はどんな馬が来ても『やってやる!』という感じで挑みたい」と菊花賞へ意気込めば、元JRA騎手の安藤勝己氏も自身のTwitterで「間違いなく本番に繋がる勝ち方。これを機に一皮も二皮も剥けてくる」と絶賛。

 皐月賞馬エフフォーリアが天皇賞・秋(G1)へ回ったこともあって、ラスト一冠の主役が定まった印象だ。

 一方、単勝1.8倍の支持を集めながら痛恨の4着に沈んだのが、ダービー馬シャフリヤール(牡3歳、栗東・藤原英昭厩舎)だ。

「1番人気に応えられず申し訳ない……」

 近10年、ダービー馬が神戸新聞杯へ出走した5頭はすべて勝利。“勝率100%”という鉄板データに後押しされたシャフリヤールだったが、降りしきる雨、そして36年ぶりの不良馬場というイレギュラーな状況には通用しなかった。「良馬場でこそのタイプだと感じました」とは、主戦の福永祐一騎手の敗戦の弁だ。

 この結果には、藤原調教師も「これだけ雨に降られたら……得手、不得手が出てしまった」と恨み節。来週の凱旋門賞(仏G1)に挑むクロノジェネシスを筆頭に、抜群の道悪適性を誇るバゴ産駒のステラヴェローチェとの明暗が大きく分かれた。

 ただ、今回のシャフリヤールの敗因は「単純な道悪適性だけではない」と記者は話す。

「福永騎手や藤原調教師が話している通り、シャフリヤールが不良馬場の影響で本来の力を発揮できなかったことは確かだと思います。ただ、個人的にそれ以上に気になったのが本馬のイレ込み具合でした。

というのも、シャフリヤールの8枠10番という大外枠は、馬場状態を考えれば(馬場の良い外を回りやすくなるため)有利な枠になるはずでした。しかし、この日のシャフリヤールはレース前からややうるさい面を見せていたので、福永騎手はスタートしてすぐに前に馬を置かざるを得ない状況に……。

結局、最後の直線まで好位組のイクスプロージョンの後ろにつけていましたが、最終コーナーで距離ロスを顧みず外を選らんだように、本来ならもっと馬場の良いところを走らせたかったと思います」(競馬記者)

 記者が話す通り、近5年で3度の稍重など、馬場が荒れることで有名な宝塚記念(G1)では、5年中3年で8枠の馬が馬券に絡んでいる。今回のシャフリヤールも8枠を活かしたかったはずだが、1頭で折り合いを付けられない状況が、結果的にその優位性を奪ってしまった格好だ。

「レース後、藤原調教師が今後について『オーナーと相談して決める』と話していましたが、仮に3000mの菊花賞になるなら、気性面で不安を残したことは大きな課題になると思います。とはいえ、2000mの天皇賞・秋(G1)では、福永騎手はコントレイルの先約があるでしょうし、非常に難しい状況に置かれました。

それでも春の日本ダービーの前には、福永騎手が『距離に関しても(共同通信杯や毎日杯の)1800mだと少し流れに乗るのに脚を使うところがあるので、2400mになるのはプラス』と語っており、その通りの勝利。陣営も当初は、神戸新聞杯を勝って菊花賞の青写真を描いていたはずです。休み明けだったので、この敗戦が良いガス抜きになればいいのですが……」(同)

 また、この敗戦には安藤氏も自身のTwitterで「(シャフリヤールの)距離に限界が見えた」とツイート。2400mを勝ったダービー馬の2200mの敗戦にあえて距離の限界を語るのは、やはりシャフリヤールの気性面に不安を覚えたからではないだろうか。

 レース後、「返し馬も良かったし、コンディションは申し分なかった」と相棒と陣営を庇った福永騎手は昨年、距離不安が囁かれたコントレイルで見事三冠を達成し、その勝負強さを見せつけている。

 果たして、第88代ダービー馬シャフリヤールはどこへ向かうのか、陣営にとっても頭を悩ます秋になりそうだ。

(文=銀シャリ松岡)

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。

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