元JRA藤田伸二氏「ユタカさんにはがっかり」、メイケイエール池添謙一にアドバイスしたスプリンターズS(G1)の大胆作戦の内容とは
10月3日、中山競馬場では第55回スプリンターズS(G1)が行われる。注目は近年屈指のハイレベル世代と呼び声が高い3歳馬だ。
古馬との混合戦が始まった6月以降、オールアットワンス、ヨカヨカ、そしてレイハリアの牝馬3頭が1200m以下の短距離レースを勝利。斤量に恵まれた部分もあったが、古馬牡馬相手に世代レベルの高さを見せつけた。
しかし、今週末のスプリンターズSでその3頭の姿を見ることはない。
ヨカヨカは本番を前に故障を発生。競走能力喪失と診断され引退。オールアットワンスとレイハリアは特別登録もせず、結局3歳馬の出走はピクシーナイトとメイケイエール(牝3歳、栗東・武英智厩舎)の2頭だけになりそうだ。
「どんな競馬を見せてくれるのか」という点でより注目度が高いのはメイケイエールの方だろう。
デビューからその類い希なるスピードを生かし、重賞を3勝した一方で、前向きすぎる気性が災いし、特に近2走では鞍上の制御が利かず、直線で失速するという残念な競馬が続いている。
今回は武豊騎手から池添謙一騎手に乗り替わりとなるが、気の向くままに逃がすのか。それとも無理にでも抑え込んで末脚に懸けるのか。その戦法に注目が集まっている。
武英調教師は『東京スポーツ』の取材に「馬の後ろで我慢が利いた時は結果が出ていますからね。池添騎手も我慢の利くジョッキーなので、そのあたりで良さを生かしてほしいと思っています」と答えており、どうやら陣営の腹はある程度決まっているようだ。
そんなメイケイエールを独自の視点で切り込んだのは、JRA通算1918勝を誇る元騎手の藤田伸二氏だ。
藤田氏は今月24日に自身のYouTubeチャンネルで「雑談しようぜ‼」と題して生配信を敢行。特にテーマを定めず、視聴者からの質問などにも答える形で約1時間にわたって語り尽くした。
その配信中、ある視聴者からメイケイエールと池添騎手の新コンビついての感想を問われた藤田氏。「面白いと思うよ」と即座に反応すると、前走7着に敗れたキーンランドC(G3)での走りをこう振り返った。
「スプリンターを目指すなら、やっぱり前回(キーンランドC)はドンケツから行ってほしかった。ユタカさん(武豊騎手)がハナ行ってしまったのはがっかりだったな」
藤田氏は前走で制御を諦め逃げの手に出た武騎手をやんわりディスると、「(メイケイエールが)行きたがっても無理してでも抑えて、上がりの3ハロンでどれくらいの脚を使えるのか。距離は違えど、(池添騎手は)デュランダルのイメージで乗るんじゃないかな」と、強烈な末脚を武器に池添騎手とのコンビでG1を3勝した名短距離馬の名前を挙げ、後輩の心中を推測した。
さらに、「後ろから残り600mまで我慢して、そこから大外ブン回してどれくらいの脚を使えるか。そうしたら次のレースにつながると思う」と、後方待機はあくまでも今後につなげるための策だと断じた。
「現在は競馬界から距離を置いている藤田氏ですから、いつも通りざっくばらんに思ったことを口にしていました。キーンランドCで武騎手が逃げたのはある程度仕方がなかったと思います。1番人気で結果を残さないといけない立場でしたし……。
ただ藤田氏の指摘通り、スプリンターズSを見据えていたのなら、道中ケンカをしてでも我慢する競馬を試しておくべきだったかもしれません」(競馬誌ライター)
代打騎乗には定評がある池添騎手。今回は人気が落ちてある程度気楽な立場で臨めるだろう。果たして「デュランダルのイメージ」で直線突き抜けるシーンを演出することはできるだろうか。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。